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誌上テーマ別サロン】第62回 <基礎講座>   スタート・アップ期のスモール・ビジネス(2)    日本経済新聞「私の履歴書」(2015年4月収録)にみるニトリの事例研究 ―「中小企業経営学入門」(62)―

誌上テーマ別サロン】第62回
<基礎講座>
スタート・アップ期のスモール・ビジネス(2)
日本経済新聞「私の履歴書」(2015年4月収録)にみるニトリの事例研究
―「中小企業経営学入門」(62)―

1 パートナーの登場による経営改善
・1人企業の状態のなかで、経営は思わしくなく、業績は悪く、食事もしっかりしていないために、創業者は体調まで崩してしまっている。このような姿をみて、母親は結婚することをすすめる。創業の翌年の24歳のときに、結婚している。
・4歳下のパートナーは、セールスの適材であった。具体的には、愛想がよいだけでなく、度胸もあり、商売上手であったので、経営は改善され、業績は向上している。年間700万円の売上高が採算ラインであったが、結婚1年目に1,000万円を実現し、2年目には1,500万円に増加している。そこで、居住用のスペースにしていた2階も売り場に変えている。

2 パートナーとの役割分担
・結婚により、役割分担による分業関係がつくられるようになり、それは明らかに業績の向上に貢献している。創業者は仕入れ、物流、店づくりに専念し、他方、セールスはパートナーが担当している。
・そして、この役割分担は、業績の向上だけでなく、後の企業成長につながっている。創業者は自分もセールスが上手であれば、ニトリは優良店にはなったが、成長はできなかったであろうと述べている。自分はセールスは苦手であるが、小売業の企業成長から考えると、セールスだけでは無理であり、仕入れと物流にも十分に配慮しなければならないのである。自分もパートナーもセールスにだけ力を発揮するのであれば、セールスは伸びるが、仕入れや物流はどうしても後回しになったことは確かに予想できる。
・パートナーが参加することで、経営は安定軌道に乗っている。創業者は「内助の功」があったという。しかし、この言葉は妻が夫を影から支えるという意味であり、適切な言葉とはいえない。妻の助けがあったというが、妻はセールスを分担しており、役割はちがうが、創業者と同等に仕事をしていたとみるべきである。要するに、妻はまさにイコール・パートナーなのである。
・パートナーは、顧客とのコミュニケーションがうまく、「こわもて」の利用者の自宅に乗りこみ、代金を回収するだけでなく、得意客に変えている。そしてまた、経営に対する腰が定まっていない創業者の行動をたしなめている。これを見ると、パートナーの役割は実際のところ「内助の功」を越えている。
・腰が定まっておらず、不行状を行う夫をたしなめ、経営者として立派に活動するように求めているところは、内助の功であるが、こわもての利用者への説得は、パートナーの仕事上の能力であり、「外助の功」になっている。そして、なりよりもセールス上手のパートナーとの結婚によって、売上高は確実に増加したことは、「内助の功」を越えていることを示している。

3 パートナーの意味
・ニトリの場合、1人企業の限界を克服するために、パートナーとして結婚相手が登場している。しかし、パートナーは、これだけではない。親しい友人であったり、かつての職場の同僚や仲間である場合もありうる。あるいは兄弟などのファミリーや親族の場合も当然のことながらある。さらに、パートナーが1人の場合もあるし、また2名以上の複数のこともある。しかし、複数といっても、それほど多くはなく、少数といってよい。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

Information
  • 開催日2020年1月5日
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