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【誌上テーマ別サロン】第98回 <基礎講座>   異なった事業分野への参入によるイノベーション ―「中小企業経営学入門」(98)―
【誌上テーマ別サロン】第98回
<基礎講座>
  異なった事業分野への参入によるイノベーション
―「中小企業経営学入門」(98)―
1 生き抜くためのイノベーションとしての「異種事業とのミックス」
・現状のままでは展望が開けず、未来に希望が見いだせないで苦労しているスモール・ビジネス経営者が多くいる。現状を打破して生き抜いていくためには、まったく関係のない事業分野に参入し、その事業分野を既存の事業にミックスしていくことも必要となろう。
・たとえば、コーヒーショップを経営しているとしよう。店主は腕をふるっておいしい、ひきたてのコーヒーを提供しているが、なかなか利用者が増えずに、苦しい経営をつづけているかもしれない。そして、チラシを配ったりして、店舗の良さをアピールしているが、なかなかうまくいかない。おそらく、このようなコーヒーショップは少なくないであろう。
2 「思い切った転換」への意思決定
・このようななかで、思い切った転換をはかる人たちが見られる。その代表的なものは、たとえばコーヒーショップを小さなイベントや学習などの会場に変えることである。いわゆるギャラリーという新しい要素を加え、ミックスすることで、店舗はそれ以前に比較して、利用者が多様に増え、よく知られるようになる。たとえば朗読の会や落語会を定期的に行ったり、周辺の子どもたちのために小さな音楽会を開催する。そして、語学や詩作の集りを行うこともできるし、お見合いの場をセットしている店舗もある。
・このように各種のイベントや学習などの「場」に転換することで、利用者の少なかった静かなコーヒーショップは大きく変わることであろう。ここで、問題なのは、そのような転換の意思決定を行うとともに、みずから動いて、いろいろな人脈を利用して、どのくらいのものを事業として展開できるかということである。そして、地元に根づいてきた経営者であれば、思い切って転換しようと思えば、それは可能であろう。
3 農村地域でも実施可能
・農村地域でも、田畑は農業従事者だけのものではなくなりつつある。田植え前の時期に、田んぼでラクビ―などのスポーツ・イベントをはじめている人たちがいる。また、畑を子どもたちの遊び場や音楽のフェスタにしようとする試みも行われている。
・かつてはイモ掘りやブドウ狩りなどの農業に関係した収穫体験が農村地域での人寄せのイベントであったが、現在では異なった異種事業とのミックスで行われはじめている。それは現代人が失ってきた“自然”や“他人”をじかに感じられる「場」であり、とくに都市部で住んでいる人びとにとって自然や人びとと交流できるハッピーな時間になるとともに、農村地域が活かせる新たなチャンスになる。
・“コーヒーショップはコーヒーを飲む場である”とか“田畑は農業従事者のものだけである”という固定観念から脱すると、新たな展望が開けることを肝に銘ずるべきである。
               (2018.9.26稿)
           永続的成長企業ネットワーク 理事
           横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年9月5日
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