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【誌上テーマ別サロン】第99回 <基礎講座>   小売食品店のサバイバル戦略(1) ―「中小企業経営学入門」(99)―
【誌上テーマ別サロン】第99回
<基礎講座>
  小売食品店のサバイバル戦略(1)
―「中小企業経営学入門」(99)―
1 小売食品店の大幅な減少
・生鮮3品(野菜、魚、肉)や加工食品などをとり扱う小規模の食品店の減少が進んで久しい。商店街を見ても、空き店舗が目立つだけでなく、小売の食品店がなくなっているのに気づく。逆にいうと、生鮮3品の店舗がなくなると、急速に商店街は衰退してしまうのであろう。
・商店街のメインの利用者である高齢者が食料品の調達に苦労し、“買物難民”になっている姿は、あまりにも厳しい現実である。要するに、食生活を支えている食品店の大幅な減少は、多くの“生活難民”をつくりだしてきているのである。
2 「減少要因」としての小売業における環境変化
・このような食品店の減少は、小売業における環境変化によって主にもたらされてきた。大型であれ、中小であれ、スーパーマーケットが台頭して、今日では衰退傾向にある。このスーパーマーケットは、食料品を重要な取り扱い商品にしてきた。そして、食料品以外の商品も手軽に購入できることも、そのメリットになっている。また、その後に台頭してきたコンビニはおにぎりや弁当などの加工食品で強みを発揮している。さらに、ホームセンターやドラックストアなども登場してきた。このようななかで小売店や商店街の力が低下してきた。
・また、都市部では安心安全な食料品を得ようと生活協同組合のネットワークを利用しようとする人びとも少なくないし、新鮮なものを求めて、農家などの生産者と直接取引を行う利用者も多くなっている。さらに、現在ではインターネットによる販売も成長している。
・要するに、小売業には環境変化が生じ、このような変化に食品店が対策らしいものを講じてこなかったのである。そして、このような環境変化が発生する以前に持っていた食品店のポジションは、このような新業態の台頭に抗することができなくなり、衰退してきた。
3 「若い消費者行動」への関心を!
・いま述べたような環境変化に対応できなかったことが、食品店の大幅な減少をもたらし、衰退の道を進まざるをえなかった。そして、現状ではその変化に抗することがむずかしい。
・現在の時点で考慮すべきは、以上のような業態変化の動きを前提にして、消費をリードする若い消費者の行動に主に関心を払い、かれらがどのような消費行動を行うかを予測しながら「食品店のあり方」を具体的に検討していくことが必要となる。
・大きな発展のための「活路」というべきものを見つけることはむずかしいが、とりあえず現状維持するぐらいの知恵をつくりだすことができると考える。若い消費者は本当に食品店や商店街に期待するものがないのであろうか。なにを行うと、関心をもってもらうようになり、消費行動の変化に“ひとすじの光”が生じるのであろうか。現状では絶望的な無力感のなかにあるが、そのようななかで苦悶し、熟慮して、現状維持のための知恵をつくり、みずからを変えていくことが大切であると考える。
               (2018.9.28稿)
           永続的成長企業ネットワーク 理事
           横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年9月20日
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