サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第83回 <基礎講座>   衰退産業の生き残りのためのイノベーション ―「中小企業経営学入門」(83)―
【誌上テーマ別サロン】第83回
<基礎講座>
  衰退産業の生き残りのためのイノベーション
―「中小企業経営学入門」(83)―
1 環境構造変化による産業の衰退
・環境の変化が激しく、それによって既存の産業が大きな影響をうけている。企業やその集合となる産業に関連する環境が構造的な変化をおこしてきたために、企業や産業がその影響をもろに受けてしまい、場合によっては衰退がもたらされるようになっている。
・たとえば、中小規模の印刷業者は21世紀に入ってから、IT(情報技術)の高度化という環境変化によって、その数を激減させてきた。印刷業は「都市型産業」ともいわれ、都市部を中心に人口の多い地域では比較的安定的な経営をつづけてきたが、ITという技術の進歩によって、だれでも容易に印刷物(パンフレット、案内状、あいさつ状など)をつくれるようになった。そこで、印刷業者の力をかりなくてもいい時代になったのである。
2 生き残りをかけて!
・印刷業は、大津波を体験した。そして、被害をうけて、業者の数を減らしてしまったのである。しかし、生き残りをかけて健闘している企業も多い。専門書、報告書、芸術本(絵画・写真など)、記念誌などの印刷物は、これまでと同じように印刷業者に依存せざるをえない。だれでも印刷物をつくれるようになったとはいえ、高度なものは現実にはむずかしく専門の印刷業者を必要としている。その意味では、専門の業者には、いっそうの印刷技術の能力アップが求められている。
・だが、生き残っている企業は、これ以外の試みを行い、イノベーションに向っている。その試みは、これまでの印刷業とは関連しない分野において展開されており、いろいろな機会を利用して、異業種交流を行い、それによって新しいビジネスの芽を発見・発掘しようとしているように見える。
・将来、ビジネスとして成長し、自社の経営成果(売上高や利益など)に貢献できるものになるかどうかはわからないが、まずは「チャレンジ」することである。どのくらいの確率で成功するかを考える前に、いろいろ試みてビジネスになるようにすることが、ここでは大切である。
・悪いいい方をすると、この試みは、生き残るための懸命な「アガキ」ともいえる。しかし、そうでもしないかぎり、大津波に押しつぶされてしまう。おそらく、この試みのなかで成功するものがでてくるようになると、衰退から再生への道が開かれてくる。それは大津波がいくぶん楽しい「サーフィン」に変わったことを意味している。
3 “なんでもあり”の気概が大切!
・この生き残りをかけて、いろいろな試みを行うことは、すでに述べた“なんでもあり”の気概をもつ世界でもある。衰退産業が生き残るためには、この気概がどうしても必要であり、それによって自社を変えるイノベーションが可能になる。そして、暗くなってはいけない。要するに、経営には「心のもち方・もち様」が大切なのである。
                                                     (2018.4.5稿)
               永続的成長企業ネットワーク 理事
               横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
Information
  • 開催日2020年12月20日
  • 場所
  • 時間
  • 費用