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【誌上テーマ別サロン】第79回 <基礎講座>   消費者依存の商品開発 ―「中小企業経営学入門」(79)―

【誌上テーマ別サロン】第79回
<基礎講座>
消費者依存の商品開発
―「中小企業経営学入門」(79)―

1 イノベーションの典型としての商品開発
・商品開発、つまり新しい製品やサービスを開発し、生産・販売することは、企業を消費者・利用者に強力にアピールするとともに、企業が変わったことを示しており、イノベーションの典型になる。新しい商品を創造しようという志向性や新しい商品が実際に生みだされた結果自体が、イノベーションの兆候であるが、さらにいえば消費者が新しい商品によって以前よりも豊かさや利便性を感じるのであればイノベーションの成果がもたらされたことになる。
・このような商品開発は、当然のことながら企業が担当してきた。そして、これからも企業が基本的に担っていくことに変わりはない。しかし、消費者・利用者などのステイクホルダー(利害関係集団)のニーズを踏まえた商品開発も行われることも大切である。具体的には、需要調査、マーケット・リサーチを実施し、消費者ニーズを把握して商品開発を展開している。とくに消費財メーカーは消費者の動きに注目し、その行動の調査を重視していた。

2 むずかしい時代の商品開発
・現代の企業にとって商品開発は不可欠であるが、むずかしい時代に直面している。わが国のような工業先進国では、物質的には豊かな成熟社会が形成され、いい商品は欲しいが、“モノばなれ”も生じてきた。商品はなんでも売れる時代はすでに過去のものである。だが、雇用面では非正規労働のウエイトが増大し、格差社会が出現し、貧しい人びとが増加している。また、スマホなどIT化の進展やネット・ショッピングの浸透によって、生活者のライフスタイルは変化し、買物行動も大きく変化してきた。
・さらに、女性の企業進出が一般的になってきたとはいえ、企業は依然として男性中心になっている。これに対して、消費の主体は、女性であり、男性中心の企業の商品開発は女性のニーズに応えていけるかという疑問も生じている。女性を商品開発に積極的に活用しなければ、売れるものは開発できないが、それができていないかもしれない。

3 女性、高齢者などを中心とした消費者の自由な発言を聞く!
・このようななかで、消費者に自社の商品についてフリーに発言する機会を社内でつくり、じっくりとさまざまな意見をだしてもらうことが商品開発のアイデアを見つけるうえで大切である。かつて女子高校生のニーズを活かした商品開発づくりが行われたことがあったが、日々の生活で満足や不満などを感じている女性の発言はきわめて貴重となる。そして、自社やその商品を理解しているだけでなく、できればライフスタイルが異なる女性の参加が望ましい。そして、スモール・ビジネスであれば、このような機会づくりは比較的容易であろう。
・また、筆者のような高齢者のニーズも直接さぐってみてほしい。高齢化の時代であるが、商品開発は若い人びとが行っているせいか、高齢者向けの製品やサービスは少ない。そこで、そのような商品開発を行えば、需要の掘りおこしは確実にできるはずである。
(2018.4.9稿)

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2020年10月20日
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