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【誌上テーマ別サロン】第80回 <基礎講座>   内製化への努力によるイノベーション ―「中小企業経営学入門」(80)―
【誌上テーマ別サロン】第80回
<基礎講座>
  内製化への努力によるイノベーション
―「中小企業経営学入門」(80)―
1 “メイク”か、それとも“バイ”か
・製造業では、“メイク(make)”か、それとも“バイ(buy)”か、が経営戦略のひとつになっている。メイクとは、部品などを自製化・内製化つまり自社内で生産することであり、これに対してバイは他社から購入したり、他社に製造を委託することである。
・わが国の大企業は、製品の組立てと主要部品の内製を担当するが、その他の多くのものは関連企業からの調達によっている。そして、“ファブレス”という研究開発型ベンチャーは、研究開発に主に専念し、製造工場をもたないので、大企業などの他の企業に生産を委託してきた。さらに、大企業どおしでは、自社ブランドではなく、OEMという注文を受けた相手先のブランドで製品をつくることも行われている。
・このようにみると、バイは製品づくりを合理的に行うためには有効な戦略といえる。そして、企業どおしの協力があれば、この戦略をうまく活用できる。
2 内製化の意味
・これに対して、メイクは自社内で生産することであり、とくに原料の調達からはじまって、部品の製造、組立てなどによる製品の完成までの一連の過程を同一の企業が担当することを「垂直的な統合」といってきた。これは、その企業が製品全体に責任を負担できることを意味しており、利用者の側からみると、「製造物責任」を問いやすい。
・しかし、自製化・内製化のためには、必要とされる経営資源が蓄積されるとともに、良好に活用できるように組織化されなければならない。そして、経営資源が十分に用意されていないときには、そのための工夫や努力が必要となる。
3 イノベーションとしてのスモール・ビジネスにおける“メイク”
・スモール・ビジネスでは、この経営資源が蓄積されていないことが一般的である。したがって、メイクの戦略を採用するとすれば、経営者をはじめとして、社内での経営資源の蓄積がどうしても必要となる。
・たとえば、後継者が父親の引退により、会社を継承したとする。父親の事業をあまり知らなかったとすれば、みずから学習と経験を積まないかぎり父親のレベルに到達することができない。さらに、父親のときよりも自製化・内製化を進めるには、学習と経験の幅を拡げ、知識、スキル、ノウハウなどの幅と深さをつくりあげていくことが必要となる。そして、企業で働く人びとに対しても、いろいろなチャンスを与えて、作業能力の向上ができるようにしなければならない。
・“バイ”の戦略をとるのとちがって、“メイク”の戦略をとることは容易ではなく、短期間でなく、少し時間をかけて社内での技術力などの経営資源の蓄積をはかることを必要とする。メイクは、その意味では即効性ではなく、「遠まわり」の戦略なのかもしれない。しかし、それに成功するならば、企業はそれまでのものから変わり、経営資源の蓄積による内部充実を確実に果たし、イノベーションをもたらしたといえる。
                                                    (2018.4.7稿)
                永続的成長企業ネットワーク 理事
                横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
Information
  • 開催日2020年11月5日
  • 場所
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