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【誌上テーマ別サロン】第75回 <基礎講座>   “なんでもあり”の気概がイノベーションの源 ―「中小企業経営学入門」(75)―

【誌上テーマ別サロン】第75回
<基礎講座>
“なんでもあり”の気概がイノベーションの源
―「中小企業経営学入門」(75)―

1 “なんでもあり”の経営
・倫理的、道徳的に問われることは、人間そして企業として行うことは絶対にしてはならないが、時代は“なんでもあり”の経営である。
・“なんでもあり”とは、実際になんでもかんでも無鉄砲に行うという意味ではなく、ある程度の熟慮のあとでは、なんでも行おうとする「気概」をもって経営を行う必要があることを示している。激動する変化に対応して、企業を存続させ、発展させていくためには、細心と慎重さを踏まえて、このような気概とか、大胆さをもって経営に臨むことが大切なのである。

2 「固定観念」からの脱却
・なんでもありの経営とは、別の言葉でいうと固定観念や常識からの脱却である。“この業種はこのような業務を行うのだ”とか、“親から継いだこの仕事はこのようにすべきだ”といった考え方に支配されているならば、それから自由になることが求められる。そのような言葉にしばられている限り、なんでもありの経営には進むことはできない。つまり、新しいことへの挑戦はできず、イノベーションにはほど遠いことになる。
・企業のおかれている環境が大きく変化しているのに、他の選択肢を考慮しない現状維持の行動をとっても、うまくいかないのは当然のことであろう。これまでのものにとらわれているかぎり、明日への展望は開かれない。

3 無碍のスピリッツを!
・「無碍雄図」(むげゆうと)は、1990年前後に筆者がつくり、使った4文字熟語である。この言葉で使ってくれる人はいなかったが、その意味は、激動の時代の経営は、「雄図」つまり大きなビジョンや目標をもつことが大切であるが、あわせて「無碍」つまり固定観念にとらわれず自由に考えることも必要であることを主張したものであった。そして、これは現在の経営に通用していると考える。
・自由に考え、現在行っている経営以外にも別の選択肢があることを発見したり、創造することが無碍のスピリッツが発現した成果(アウトカム)である。これまでのものにとらわれずに、いろいろ考えてみることは、とくに現在のビジネスがうまくいっているときには、抵抗感がある。
・また、少しうまくいっていない程度の場合にも、現状の活動に努力すれば、もとの状態にもどるとも考えてしまう。しかし、逆にいえば、経営に余裕があり、苦しくならないときに、つぎの手となる別の選択肢を探してみることのほうがむしろ理想であろう。
・このように考えてくると、イノベーションの源となる“なんでもあり”の気概とは、この無碍のスピリッツなのである。そのためには、自由に発想してみることがなによりも大切なのである。
(2018.4.5稿)

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2020年8月20日
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