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【誌上テーマ別サロン】第76回 <基礎講座>   苦境下のイノベーション ―「中小企業経営学入門」(76)―

【誌上テーマ別サロン】第76回
<基礎講座>
苦境下のイノベーション
―「中小企業経営学入門」(76)―

1 「苦しいときの神だのみ」ができれば
・経営が苦しくなった苦境下に、神様や仏様がでてきて、なんとかしてくれて助けてくれれば、本当にいいと思う。実際には神様や仏様はいるかもしれないが、なかなか助けてくれたという話を聞いたことはない。もちろん、信心深くいつも神様や仏様を大切にしているならば、信心が通じて助けてくれると少しは思いたいが、日頃の信心がないのに、困ったとき、苦しいときにだけお願いしてみても助けてくれることはないであろう。

2 「自力」と「他力」
・神様やその住む天は、みずから助けるものを助けるともいうから、神だのみは無理で、やはりみずからの努力が必要になる。つまり、「自力」が前提なのである。むしろ、努力したり、そのための工夫や知恵をだしていると、苦しい状況が改善したり、新たな展開が行われ、運が開けることがある。それは「苦境下のイノベーション」であり、“幸運”にめぐりあうことである。苦しいからといって、なげだしてはまさにオシマイなのである。
・また、苦しいなかで懸命に努力している姿勢に同情・共感し、支援する人も往々にして現れるものである。この世は、決して捨てたものではなく、「自力」が前提だが、「他力」によっても支えられている。われわれ日本人は、“おかげさま”といって他人などの支援つまり「他力」に感謝してきたが、この他力を得るためには、自力が必要なのである。

3 「火事場のばか力」が苦境からの脱出をもたらす!
・「火事場のばか力」という言葉を子どもの頃から教わったことがある。それは、危機的な苦しい状況では、人間はなみはずれた力を発揮することがあることを示している。火災になると、家のなかにある大切なものをなんとかだそうとするが、とくに重いものでも力がでて、ひとりでも持ちだすことができるという。
・これと同じことが、苦しい状況のもとで活動している経営者にも、求められている。自分が所有し、経営している企業に対する思い入れは当然のことながら強いから、自社をつづけていきたいと思っている。この思いが強ければ強いほど、苦境をなんとかしなければならないと考えている。それは、きわめて本気度の高い願いである。
・しかし、火事場のばか力と苦境下の企業経営に求められるばか力には、明らかにちがいがある。火災の場合、自分の命を守りながら、なにを持ちだすかの即決的な判断能力が求められているが、実際に持ちだすための体力や腕力がなければならない。つまり、肉体的なものがばか力の主な要素になる。
・これに対して、苦境下の企業経営は苦しい状況から脱出するための知恵を全力を尽くしてだすことである。経営が本当に苦しくなったら、そして自分の企業をつづけさせたいと願っているならば、そのときには必ずや知恵がでるであろう。知恵をだせれば、イノベーションが生まれ、企業は存続することができると考えたい。
(2018.4.5稿)

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2020年9月5日
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