【誌上テーマ別サロン】第51回
<基礎講座>
スモール・ビジネスの存続を考える
―「中小企業経営学入門」(51)―
1 存続を制約する主要な要因(1):環境の変化
・スモール・ビジネスだけでなく、大企業の場合にもあてはまるが、その存続を制約する要因とはどのようなものであろうか。これについては、まず環境があげられる。とくに現代のような時代にあっては、環境があまり変動せずに安定的であるというわけではなく、たえずはげしい変化のなかにある。環境が安定的であれば、これまでうまくいっていた経営(マネジメント)をつづけてもいいわけであるが、それはできないのである。
・環境の変化にクレバーかつスピーディに対応しなければならないが、しかし、わかっていてもできないことがある。認識していないのであれば、全然問題にならないが、認識できていても、対応ができないのである。
2 存続を制約する要因:経営資源の状況
・この認識ができていても、対応ができない理由は、主にどこにあるのであろうか。経営資源が比較的ある大企業の場合には、組織が大きく、官僚制的なカルチャーが支配しているから、組織内のコーディネーション(調整)に時間を要することになる。要するに、大企業の場合には組織でものごとが動くから、意思決定の過程が重視され、対応が遅くなる。
・これに対して、スモール・ビジネスの場合には、このような組織的な意思決定上の問題はむしろない。経営者の個人力によるところが多く、調整に手間どるということはない。
・スモール・ビジネスにとっては、経営資源が不足しているために、せっかくのチャンスが環境の中にあっても対応できずに、みすみすチャンスを逃すことになる。ある経営者が「ファイナンスと人が追いつかない」という述べてくれたことがあるが、資金や人手がうまく調達できないために、対応ができなかったという。
・また、周辺に競争業者が入ってきて、ピンチになると思っても、対応のほうはうまくいかないことも多い。いい対策を講ずることがスモール・ビジネスにはむずかしいのである。
3 経営者の力量への期待
・このように、環境や経営資源上の制約はあるものの、スモール・ビジネスが存続するには、経営者個人のもつ力量が必要となる。要するに、それは「経営力」であり、スモール・ビジネスにとってきわめて重要な経営資源となる。そして、この経営力の発揮こそが存続を制約する要因を克服していくことになる。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
- 開催日2019年1月5日
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