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【誌上テーマ別サロン】第50回 <基礎講座>   「統制の範囲」克服段階のスモール・ビジネス ―「中小企業経営学入門」(50)―

【誌上テーマ別サロン】第50回
<基礎講座>
「統制の範囲」克服段階のスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(50)―

1 スモール・ビジネスの規模拡大にともなう変化
・1人企業が少数の従業員を必要するようになると、雇用が行われ、経営と労働という仕事が分裂し、分化する。もっとも、経営者と従業員とは直接的な接触関係にある。そして、従業員の人数がさらに増えて、10名を越えて、20名、30名になると、経営者個人ではコントロール(監督)できなくなる。これを「統制の範囲」(スパン・オブ・コントロール)という。
・この段階になると、経営者は管理職というべき人間(管理者)を自分の下に配置して、この人びとを通じて、従業員をコントロールするようになる。要するに、管理者は経営者に代わって部下を監督する。この管理者の配置によって、スモール・ビジネスに階層分化という構造変化が起こり、経営という仕事自体が経営者と管理者というかたちで階層(上下関係)的に分裂していくわけである。これは、1人企業や少数の従業員を雇用するレベルの企業では見られなかった現象である。そして、このような分裂状態を「経営内部の分化」という。さらに従業員が多くなると、大企業でみられるような管理者内部でも階層関係が形成され、ミドル・マネジメントとロワー・マネジメントへの分化が行われる。

2 階層分化と職能分化による組織の構造化
・このような階層分化にあわせて、製造、販売、総務などといった職能部門の設置が行われ、担当の適材の管理者が配置される。これが職能分化であるが、この職能分化と階層分化によってスモール・ビジネスにおいても組織がつくられることになる。階層分化は組織のタテの関係をつくり、職能分化はヨコの関係をつくるわけである。これにより責任・権限の明確化や命令の統一性が維持され、組織は円滑に動くようになる。
・かんけつにいうと、経営者は部下となる管理者をかかえるとともに、かれらの行う仕事については、しっかりと業務分担を行うようにする。このように、「統制の範囲」を克服する段階になると、このようにして組織がつくられる。

3 出現してくる大企業経営の特徴
・このほかにも、この段階になると、大企業の経営に見られるような特徴が出現してくる。同族関係者や信頼できる友人などを中心に経営陣の追加が行われ、仕事の分担関係が生じる。要するに、経営者の協力者が必要になってくる。
・採用や組織づくりが行われるためには、経営の制度化や公式化・標準化なども進展する。また、短期の経営計画の策定や経営理念の制定もこの段階になると行われるようになる。
・これらは経営が比較的安定化したために出現してくるが、顧客や消費者の減少が大きくなると、現状を維持することがむずかしくなる。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2018年12月5日
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