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【誌上テーマ別サロン】第93回 <基礎講座>   ものづくり企業のイノベーション(2) ―「中小企業経営学入門」(93)―
【誌上テーマ別サロン】第93回
<基礎講座>
  ものづくり企業のイノベーション(2)
―「中小企業経営学入門」(93)―
1 地域資源の新たな活用
・地域資源を活かして伝統工芸品などが、地域のスモール・ビジネスや職人といわれる人びとのスキルによって生産されてきた。伝統工芸品に含まれるものには、きわめて多様なものがある。
・たとえば、「竹」を素材とする伝統工芸品としては、竹ザルとか、竹カゴがあった。そして、昔の子どもたちは「竹トンボ」をつくって遊んでいた。また、雪国といわれる地域では、「竹スキー」が利用されたり、ソリ遊びには竹が使われていた時期があった。
・竹は、日本人の生活には不可欠なものであり、おそらく30~40年前までは一般の家庭で竹ザルや竹カゴは身近な製品であったり、家のまわりを板塀だけでなく、竹の塀でかこうことも見られた。つまり、竹の利用がかなりあったので、竹に関係する業者がいたのである。
・しかし、ライフ・スタイル(生活様式)の変化によって竹の利用は大幅に減少し、竹の製品は衰退してきた。そして、竹職人もほとんどいなくなってしまった。このようななかで、地域資源としての竹を新たに活用してイノベーションを起そうというスモール・ビジネスがある。
2 (株)コスモ工房の事例
・高知市のコスモ工房は社長の青野俊の設立によるが、もともと木材関係のビジネスを行っており、そのなかで竹という素材に魅せられ、平成15(2003)年頃から地元産の高知の竹を使った製品―建材や小物製品―を開発・製造するようになった。
・しかし、平成21年からトヨタの高級車レクサスのハンドル部材を供給することになり、これをチャンスにして、大きな転身をはかっている。部材としての評価が高かったので、世界的にみても著名なブランド車の部材を供給することになったが、「かんばん方式」などに象徴される高度なトヨタ生産方式に対応できる体制づくりに苦労している。これにより、同社のコア・コンピテンス(中核的能力)となる「技術力」は、いっそう向上するとともに、彼のもとで働く人びとの「やる気」も高まっている。
・あわせて、竹の選別、切だし、加工などの原料の調達から工場への運びこみと具体的な製品化にかかわる一連の過程をつくりあげたために、月間で7,000本近い竹をとり扱うことができるようになっている。虫とか、カビ、収縮などで竹のとり扱いはむずかしいが、そのような仕事ができる人材の育成にも力を注いでいる。
3 地域資源の見直しをしてみよう!
・使用されなくなった竹という地域資源を見直すことで、新たなビジネス・チャンスが生まれ、ものづくりのイノベーションをおこさせることが、コスモ工房の事例からわかった。そして、時代の変化のなかで、このようなチャンスは他にもあるだろう。
(2018.10.4稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年6月5日
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