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【誌上テーマ別サロン】第92回 <基礎講座>   ものづくり企業のイノベーション(1) ―「中小企業経営学入門」(92)―
【誌上テーマ別サロン】第92回
<基礎講座>
  ものづくり企業のイノベーション(1)
―「中小企業経営学入門」(92)―
1 スモール・ビジネスが多い食品加工業
・スモール・ビジネスのものづくり企業には、食品加工業が多い。これには、地域資源を利用して地元の消費者を相手にする「地産地消型」や地域資源を利用し、地域ブランドをつくる「名産品型」がある。また、両者を兼ねる「併用型」もある。
2 森定商店の「こんにゃく」づくり
・神奈川県横須賀市の創業70年をこえる森定商店を例に考えてみよう。同社の創業者は、食品加工業の分野で、具体的には「こんにゃく」づくりのほか、豆腐やアイスクリームなど、比較的広範囲の商品をつくり、販売していた。
・しかし、現在の社長は、いわゆる「選択と集中」の戦略をとり、多品種の商品づくりをやめている。これにかわって、具体的には、こんにゃくを中心に、製造方法が近い「しらたき」や「ところてん」に集約してきた。
・同社のこんにゃくには、いくつかの特徴がある。そのひとつは、無数の気泡を入れることで、煮物にしても刺身にしても味がしみこむようにしていることである。そのため、製造工程に一手間かかるが、これによって他製品との差別化をつくるとともに、おいしさが増すものにしている。
・第2に、原料は大体群馬県のものであるが、地元の「猿島のワカメ」や「走水の青さのり」などの海産物を入れることで、「差別化」をはかっている。つまり、この差別化は地域資源を活用した製品開発になっている。
・もうひとつは、「田楽」や「うどん風」などのように、具体的なレシピをつけて、食べ方に関する情報を提供していることである。こんにゃくには、「板こんにゃく」、「玉こんにゃく」、「糸こんにゃく」などの形態があるが、食べ方の情報提供することで消費者を便利にしている。
・これに加えて、同社はスーパーマーケットなどの小売食品店を中心とした販売ルート以外の方法も実践してきた。それは、横須賀のおみやげ品店にも卸すことで、地域ブランドにしようとしてきたことである。あわせてネット販売も併用されている。要するに、販売ルートの開発にも努力している。
・このようにして、同社はこんにゃくづくりのイノベーションを行いつつ、冒頭で述べた「地産地消型」と「名産品型」の併用型を実現しようとしている。
3 無限に発展する経営
・森定商店のものづくりを見ると、経営とは新しいことへの挑戦であり、ある意味では大変さをイメージさせるが、別の意味ではおもしろさや楽しさを感じさせるものである。そして、同社の経営規模は大きくならないかもしれないが、さらに無限に発展していくことであろう。
(2018.10.3稿)
           永続的成長企業ネットワーク 理事
           横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年5月20日
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