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【誌上テーマ別サロン】第127回 <基礎講座>   スモール・ビジネスの形容詞はなにか ―「中小企業経営学入門」(127)―
【誌上テーマ別サロン】第127回
<基礎講座>
  スモール・ビジネスの形容詞はなにか
―「中小企業経営学入門」(127)―
1 “スモール”であることを問う
・かつてシューマッハーのいった「スモール・イズ・ビューティフル」(小さいことは美しい)という言葉が有名になったことがある。
・大企業(ビッグ・ビジネス)は官僚制や人間無視の合理性の経営を実践したり、管理価格で巨利を得たり、下請けの中小企業の経営に圧迫をくわえてきた。また、大企業には病理が見られ、それは”大企業病”ともいわれてきた。要するに、大企業はビューティフル(美しい)とは必ずしもいえなかったのである。
・それでは、スモール・ビジネスは、はたしてどのような形容詞がフィットするのであろうか。そして、シューマッハーがいうように、はたしてビューティフルであるのか。
2 “弱い”というイメージ
・スモールは”小さい”であるから、スモール・ビジネスはまさしく小企業であり、小規模を特徴としている。経営者が調達できる各種の経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)は当然のことながら少ない。いろいろなことを行うにも経営資源が少ないので、実行することがむずかしく、それは”弱い”(ウィーク)というイメージに結びついてきた。いうまでもないが、これに対して、大企業は”強い”(ストロング)というイメージをつくりあげてきた。
・確かに、大企業に比較すると、総じてスモール・ビジネスは小さく、少なく、そして弱いといえる。しかし、スモール・ビジネスの実態を見ると、そんなにかんたんに結論をくだすことはできない。
・利益をあげ、いい経営を行っているように外見的に見えても、経営者は不正行為を行っている場合がある(A型)。また、逆に経営者として倫理的にも立派に活動し、地域社会にも貢献しているが、利益をあげるのに苦労しているケースもある(B型)。そして、倫理的にも立派で、企業業績もしっかりあげている企業もある(C型)。さらに、不正を行っても、利益をあげられない場合もある(D型)。
・この4つのタイプのスモール・ビジネスがあるが、このなかで、C型を除く、A、B、D型は弱い経営を行っている。もっとも、C型のスモール・ビジネスはおそらく多数派ではないであろう。しかし、このC型には強いというイメージがあると考える。
・そして、C型のスモール・ビジネスが増加していけば、小さいからスモール・ビジネスは弱いというイメージをとり除くことができるかもしれない。
3 “強い”ははたして”美しい”ことか
・C型は強いというイメージがあるとともに、”美しく”も見える。しかし、”強い”ことと”美しい”ことは同じものであろうか。これは大きな疑問である。ステイクホルダー(利害関係団)との関係をしっかりつくりながら、企業としての利益獲得に苦労している多くのスモール・ビジネス(B型)も私には美しく見える。
(2020.2.26稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2023年10月5日
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