サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第115回 <基礎講座>   経営改革による「働き方改革」 ―「中小企業経営学入門」(115)―
【誌上テーマ別サロン】第115回
<基礎講座>
  経営改革による「働き方改革」
―「中小企業経営学入門」(115)―
1 前提となる「経営改革」
・「働き方改革」の実施が求められている。第2次世界大戦後の復興過程にあった時期の働き方に比較して、現状ははるかに改善されたと思われるが、長時間労働が思ったほどに減少していないかもしれない。また、ヒドイ長時間労働は減ったり、週休2日制が導入されたりしているが、各種の休暇制度の利用率は決して高いとはいえない。要するに、働き方改革は思ったほど進んでいない。
・考えるに、自社の経営をどのように行うかを検討し、場合によっては経営を変えないと働き方改革にはならないかもしれないことを自覚しなければならない。現状の経営を維持したままで、働き方改革を行うことはむずかしく、経営改革の前提がなければ働き方は改革できないであろう。
2 向洋電機土木(株)の事例
・横浜市南区にある向洋電機土木は、従業員数約30名の企業で、女性は半数近い規模になっている。マンション、オフィス、スポーツ施設、公園、駅舎などの建築物の電気工事がメインの業務内容である。
・同社の働き方改革は、いうまでもないが経営改革からスタートしている。この具体的な経営改革とは、ICTの進展に対応するテレワークの導入であり、これによって男性の従業員は本社に寄らずに「直行直帰」で仕事を行うことができるようになった。つまり、会社にいなくても、仕事の現場や自宅などで事務処理作業を行えることになった。テレワークは、ガソリン代などの移動コストを削減するだけでなく、残業代の削減に貢献したという。そして、働く人びとの仕事時間を減少させ、残業時間も減っている。
・あわせて、女性の積極的採用と活用をはかることで、現場で働く男性の仕事を軽減し、女性の能力開発を重視している。また、それだけでなく、企業情報の共有化をはかって、仕事の質を向上させている。
・かくして、同社の経営改革は成果をあげることになり、生産性の向上と顧客からの信頼をもたらしている。そして、このような経営改革を行うなかで働き方改革が展開されている。さらに、このような流れがつくりだされてくると、優秀な人材の獲得や従業員の定着率の向上なども実現する。
3 経営改革をどのようにはじめるか
・向洋電機土木の場合、ICT対応のテレワークの導入という経営改革であり、これを行うことで、働き方改革を可能にしている。この事例からいえることは、経営改革として行うべきどのような「経営課題」をそれぞれの企業がもっているかを自問することである。どのような経営課題があるのか、その課題解決のためにどのような経営改革をおこなうべきかを検討することからはじめなければならない。
(2019.7.4稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
Information
  • 開催日2022年10月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用