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【誌上テーマ別サロン】第107回 <基礎講座>   顧客とメーカーを結ぶネットワーク戦略 ―「中小企業経営学入門」(107)―
【誌上テーマ別サロン】第107回
<基礎講座>
  顧客とメーカーを結ぶネットワーク戦略
―「中小企業経営学入門」(107)―
1 主要なステイクホルダーとの関係創造
・スモール・ビジネスの経営にとっても、主要なステイクホルダー(利害関係集団)との関係をうまく創造させ、発展させていくことが大切である。とくに大切になるのが、小売業であれば顧客とメーカーになる。顧客を獲得できなければ経営をつづけることはできないし、商品を提供してくれるメーカーとの関係もしっかりつくり、対等につきあえるものにしていかなければならない。
2 農作業用具店の事例
・山梨県甲州市であるブドウ栽培の農家向けの作業用具を販売している小売店は、この3者関係づくりのためのヒントになる事例である。山梨のブランド品ブドウづくりに必要な製品については品ぞろえに注意して、農家のニーズに応える努力を行っている。したがって、ブドウの生産者にとって頼りになる店舗になっている。
・しかし、それだけでなく、生産者の意見(悩み、不満、希望など)をていねいに聞きとり、製品の改善や新製品開発に関する情報を得ている。「このように改善すると、作業が能率的になる」とか、「こんな道具があれば、仕事が楽になる」などの情報を生産者との対応のなかで獲得している。そして、獲得した情報をもとにして、具体的に製品の改善や新製品を自力でデザインし、開発しようとしている。
・このデザインした開発情報を商品を提供してくれるメーカーに伝え、メーカーの製品開発をサポートしている。ここで注目すべきは、顧客からの生の情報を直接にメーカーに伝達するのではなく、小売店のなかで吟味・検討してつくりあげた具体的な製品開発プランを提案していることである。それがこの小売店の強みであり、メーカーとの関係を対等なものにしている源泉である。
・要するに、この小売店は“ファブレス(工場をもたない)”の研究開発企業であり、設計したものをメーカーに委託しているような関係になっており、メーカーにとっては、研究開発を小売店に依存しているといってよい。
3 農作業を楽しくするために
・おそらく、この小売店のデザイン力や研究開発は、農作業の合理化をするだけでなく、確実に農作業を楽(ラク)にするのに役立っている。しかし、さらに農作業を楽(タノ)しくすることにも注力している。その例となるのが農作業用のファッション開発である。かつてとちがって、いわゆる現業で働く人たちのファッションは、現在すてきなものに変わってきている。農作業が楽しくなるファッションづくりも農作業のイメージを変えるものとなるが、ここでもこの小売店は役割を果たしている。
           (2019.2.15稿)
       永続的成長企業ネットワーク 理事
        横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2022年2月5日
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