[永続企業へのヒント:この一冊] ~高橋秀彰著『「一見さんお断り」の勝ち残り経営』ぱる出版、2017年
[永続企業へのヒント:この一冊]
~高橋秀彰著『「一見さんお断り」の勝ち残り経営』ぱる出版、2017年
・著者の髙橋秀彰氏は、髙橋秀彰綜合会計士事務所 代表。公認会計士・税理士・宅地建物取引士。昭和40年生まれ、愛知県出身。立命館大学理工学部卒。創業当初の資金状況の苦しい中でも「一見さんお断り経営」を貫き、公認会計士であるにもかかわらず経済合理性に反するリスクを背負った経営判断を行ったことから一目置かれる信用と実績を築く。とくに他の会計事務所では手に負えない高度な案件などを得意としており、数多くの相続対策や非上場企業の株主構成の再構築、資金繰り改善の実績を持つ。また、京都花街のお茶屋では稀有な顧客として知られ、京都花街の不文律や裏事情にまで精通している。
内容紹介
「顧客満足」を突き詰めると、「一見さんお断り」に行き当たる。
◎完全なオーダーメイドの個別受注生産での対応が可能。
◎リピート客が上質な新規顧客のみを紹介するシステム。
◎薄利多売・価格競争・広告宣伝とは無縁の永続経営。
・四半世紀にわたって公認会計士・税理士として関与してきた企業を見てみると、長期にわたって好調な業績を維持している企業にはいくつかの共通点がある。
そのうちの強力な一要因として、「一見さんお断り」のような個別受注生産的な「考え方」「経営方針」が健全かつ明確であること。
・そして、それが企業の構成員一人一人の行動原理として機能し、目先の業績の浮沈に浮足立って考え方を変えることなく徹底しているということが挙げられる。(まえがきより)
【一見さんお断り経営の真髄】
◎安心と信用が経営を強くする
◎顧客のニーズを叶える個別受注生産
◎価格以外は徹底的な顧客満足
◎価格競争への柔軟な対応力
◎売込み営業、カタログ、料金表、ショップカード要らず
◎馴染み客、一見さんの二つのラインの明確な分離
(出版社からのコメント)
「一見さんお断り」は、京都花街の悪口として真っ先に出てくるほど有名です。お茶屋側からも売上や利益の拡大という観点からは完全にマイナスとなるルールです。しかし不思議なことに、そんなネガティブイメージを振り撒くようなルールを頑なに守り続けていても350年間もの永きにわたり存続し、しかも近年経済規模が拡大しているのが京都花街のお茶屋です。実は、「一見さんお断り」には驚くべき繁栄の法則が隠されているのです。
(主な著者の言葉)
・今のお茶屋を見ると、その(350年の)ターニングポイントの都度、目先の利益よりも世に出すものの品質を落とさないことを優先させる決断をしてきており、その結果が今の京都花街の知名度と人気を形成している。
・全てを対象として より多くの利益獲得を目指すのではなく、自社の方向性を明確にして品質を高め、結果的に自社の良さを理解してもらいファンとなってくれた顧客との長い取引を継続する。
・舞妓になるということは職業選択ではなく、生き方の選択と考えるべき。
・京都花街のお茶屋の経営は、他の一般企業の経営と同様の、現役の日本企業の経営。
・京都花街の中に残っている「考え方」、及び、その「考え方」に基づく経営にも350年前からの日本的なものが色濃く残されている。
・なんらかの目的を達成するという意味で組織を見た場合、京都花街のお茶屋を始めとする戦前のスタイルを残す日本の組織は、世界のデファクトスタンダードから高いレベルの方向へ大きく乖離するというポジティブな意味でのガラパゴス化を意味している。
・グローバルスタンダードという名のアメリカンスタンダードやヨーロッパ発祥のISOマネジメントシステム規格に染まることと逆行する日本独自のガラパゴス化に今後の日本の活路の一つがあることを示唆している。
・株式会社という仕組みは、京都花街のお茶屋を始めとする超長期的な視点からの日本的な経営や、近江商人におけるいわゆる「三方よし」の考え方とは馴染まない。
・目先の短期的な利益追求をしないという経営のスタンスは、京都花街のお茶屋だけでなく、長く生き残ってきた日本の企業に共通して流れている考え方であり、そのような考え方ができることが同族会社や非上場会社の大きなメリット。
・経営者が、短期的な利益追求最優先という圧力から解放されている場合、長期的な視点からの意思決定ができる。
・「会社はだれのものか」京都花街のお茶屋の場合、我々顧客が感じることは、お茶屋はお母さんや芸舞妓や顧客のものではなく、もはや日本のものだということ。
・会社が従業員や顧客や日本のものだと考えると、もうオーナー経営者といえども己の一存で勝手なことはできなくなる。このような考え方が、日本的な経営というものを形成している。
・京都花街のお茶屋にも・・・、儲けよりも自社がなすべきことを優先するという考え方が流れている点が、日本的な経営の考え方の魅力だと感じる。