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【セミナー特別企画】第64回 <人生100年時代へのヒント:長寿者/百寿者のことば・生き方(64)> 落語家・三遊亭金翁(92歳)さんの生き方
【セミナー特別企画】第64回
<人生100年時代へのヒント:長寿者/百寿者のことば・生き方(64)>
落語家・三遊亭金翁(92歳)さんの生き方
・芸歴80年 しゃべりは現役。落語界で最長の芸歴。
・尋常小学校を出たばかりの12歳で三代目三遊亭金馬師匠に弟子入りして、今年で92歳である。
・落語家が腹話術なんて邪道なのかもしれないが、仕事を選べる時代ではなかったし、僕の師匠は「何でもやってみろ」と言う人だった。
・やがて無理がたたって喉にポリープができ裏声が出せなくなってからは、落語のけいこに真剣に取り組んだ。
・終戦の年の45年に二ツ目「小金馬」になり、58年に真打(しんうち)昇進、67年に「四代目金馬」を襲名して落語協会に入った。
・僕と猫八と貞鳳が出る演芸番組がスタートし、やがてNHKで、この3人による「お笑い三人組」が始まった。50年代半ばから10年に及ぶ長寿番組である。
・忙しくて何度か体を壊し、数年前には脳梗塞も患ったが、回復して、2020年に次男に五代目金馬を襲名させた。自分は金翁になった。
・自分は金翁になった。最近は「金翁ロードショー」と題してユーチューブもやっている。
・今年10月末には80周年の記念の会をやって、人形のター坊にも再会した。
・さすがに最近は足腰が弱ってきた。でもこの商売は口さえ動けばできる。
・しゃべっているときが一番楽しい。
・命のある限り、しゃべり続けたい。
[今回は、92歳の落語家・三遊亭金翁さんの生き方を取り上げる]
――――<以下日本経済新聞記事(2021年12月10日)より>―――――――
芸歴80年 しゃべりは現役 三遊亭金翁
落語界最古参の92歳、テレビやネット動画へ広げた芸風
・入門は1941年、真珠湾攻撃の年だった。以来、80年。落語界で最長の芸歴となった。12歳で三代目三遊亭金馬師匠に弟子入りして、今年で92歳である。
・知り合いのおじさんの家で聞いた柳家金語楼師匠のレコードが、落語との出合いだった。金語楼師匠お得意の「兵隊落語」で、全部で6分ほどの噺(はなし)を全部覚えて、両親のやっていた深川(現在の東京都江東区)の食堂のお客さんの前で喋(しゃべ)った。
・「うまいじゃないか」「落語家になった方がいいよ」なんてほめられて、その気になった。尋常小学校を出たばかりの入門で、前座名は「金時」だった。
・戦争の時代で、間もなく若い前座が次々に兵隊にとられた。寄席で雑用などの人手が足りなくなって、僕も呼ばれた。僕の師匠は当時、東宝名人会専属で寄席には出なかったが、僕自身は落語協会の(二代目三遊亭)円歌師匠の預かりという形で、寄席で修業させてもらった。
・頼まれて学童疎開の慰問にも出かけた。親と離れて、田舎で合宿生活をしていた子供たちのために、紙芝居と腹話術と落語をやった。喜んでくれてうれしかったけれど、僕も疎開児童とたいして変わらない年齢だった。
・落語家が腹話術なんて邪道なのかもしれないが、仕事を選べる時代ではなかったし、僕の師匠は「何でもやってみろ」と言う人だった。そのころ、戦争で仕事がなくなったオペラ歌手やタップダンサーの間で腹話術をやる人が増えていて、それを真似(まね)して人形との漫談のようなことをした。実際、人形には随分助けられた。初めて手に入れた自宅の基礎部分くらいは、相棒の人形「ター坊」が稼いだと思う。
・でも、やがて無理がたたって喉にポリープができ裏声が出せなくなってからは、落語のけいこに真剣に取り組んだ。終戦の年の45年に二ツ目「小金馬」になり、58年に真打(しんうち)昇進、67年に「四代目金馬」を襲名して落語協会に入った。
・初期のテレビの思い出も話そう。テレビには試験放送から出ているが、はじめはものすごくライトが熱いので参った。当時のカメラは露出感度が低かったので5キロワットのライトを4台も当てられたからだ。カメラの前に5分も立っていられなかった。ギャラはほんのわずか、でもそのおかげで、本放送が始まってすぐに声をかけてもらえた。
・NTV(日本テレビ放送網)の開局1周年の記念放送の日のことだ。急に30分の間(ま)ができたから何かやってと頼まれて、私と(ものまねの江戸家)猫八、(講談の一龍斎)貞鳳(ていほう)、歌奴(後の三代目円歌)の4人で、プロレスごっこをやった。
・これが受けて「来週水曜の昼からレギュラー番組をやるが出られるか?」と言われた。僕と猫八と貞鳳は「ええ、もう1年中あいてます!」。歌奴だけは地方で仕事の予定があって、断った。
・急きょ、僕と猫八と貞鳳が出る演芸番組がスタートし、やがてNHKで、この3人による「お笑い三人組」が始まった。50年代半ばから10年に及ぶ長寿番組である。もし、あのとき歌奴も暇だったら「お笑い四人組」だったかもしれない。
・忙しくて何度か体を壊し、数年前には脳梗塞も患ったが、回復して、2020年に次男に五代目金馬を襲名させた。自分は金翁になった。最近は「金翁ロードショー」と題してユーチューブもやっている。今年10月末には80周年の記念の会をやって、人形のター坊にも再会した。
・さすがに最近は足腰が弱ってきた。でもこの商売は口さえ動けばできる。しゃべっているときが一番楽しい。命のある限り、しゃべり続けたい。
(さんゆうてい・きんおう=落語家)
Information
  • 開催日2024年10月25日
  • 場所
  • 時間
  • 費用