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<基礎講座>  地域密着経営のための思想 ―「中小企業経営学入門」(40)―

<基礎講座>
地域密着経営のための思想
―「中小企業経営学入門」(40)―

1 地域密着性の発揮
・地域に密着して地域の経済を支えているスモール・ビジネスは、いっそうこの地域密着性を発揮することがもとめられている。地域の衰退がいわれ、人口減少のなかで今後消滅するところがでてくるという。そこで、スモール・ビジネスは経済だけでなく、地域社会(コミュニティ)の持続可能性にも大きくかかわっている。しかし、スモール・ビジネスの経営には余裕がなく、企業としての生き残りに躍起になっているのが現状である。その意味では地域密着性どころではなく、地域貢献活動を放棄しなければならないという雰囲気が漂っているのかもしれない。

2 地域貢献活動を実践するための思想
・それでは地域貢献活動を実践し、地域密着経営を行うための思想というか、考え方にはどのようなものがあるのであろうか。これについては横浜市で造園業を経営している石井造園の石井直樹社長の言葉がそれを的確に表現している。石井社長はスモール・ビジネスにおけるCSR(社会的責任)の代表的な実践者であり、地域CSRの提案者であるが、「ついでに、無理なく、達成感のあることをしよう!」という。
・「ついでにやる」は造園業という本業を通じた活動を行うことであり、本業に関係ないことを行うことではない。無関係を行うのであれば、負担が大きく、働く人びとにとっては大変な思いをしなければならない。いま行っている仕事に関係しているところで行うならば、容易に引きうけることができるのである。そして、「無理なくやる」は企業としてあまり費用をかけずに行うことであり、無理がないから継続することができるわけである。もうひとつの「達成感のある活動をやる」は、そのような活動をやると、働く人間は、いい気持ちになり、この気持ちのよさはやがて運動(ムーブメント)になり、社会現象になるかもしれないという。
・「ついでに、無理なく」は、余裕がないスモール・ビジネスの経営にとって重要であり、これに対して「達成感」はスモール・ビジネスで働く人間にとって重要であるとともに、社会を変革しうる革新(イノベーション)をつくりだす要因になることが期待されている。

3 地域貢献活動を!
・このような思想によって行うと考えれば、地域貢献活動は比較的たやすくできることになる。立派にやろうと考えてしまうと、なかなかできないが、ここで述べた思想によるならば、意外と明日からでも実践できよう。そして、経験をつむなかで、新たな知恵が生まれ、地域貢献に幅と深さがでてこよう。

            永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・放送大学客員教授
斎藤毅憲

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  • 開催日2018年1月5日
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