誌上テーマ別サロン】(第5回)
<基礎講座>
フレキシブル・マネジメントを展開するスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(5)
1 「フレキシブル・マネジメント」の意味
・スモール・ビジネスの“いいところ”にフレキシブル・マネジメントがある。それでは、その意味とはどのようなことであろうか。
・スモール・ビジネスは小さいことから、よく“小回りがきく”といわれてきた。この小回り性がかんたんにいうとフレキシブル・マネジメントの意味するとこ ろである。フレキシブルとは柔軟性があるとか、機動性のあることを示しており、企業の経営が環境の変化に対する対応能力をもっていることである。大企業は 環境変化を認識していても大きいがために、なかなかその変化に対処できず、フレキシブル・マネジメントをとりづらいといわれてきた。
2 「ゾウ」と「カモシカ」
・ゾウは大企業であり、カモシカはスモール・ビジネスにたとえたのは、ドラッカー(P.Drucker)であるが、このたとえはおもしろい。たしかに、ゾ ウは大きく存在感があり、力強さを感じさせる。だが、小さなカモシカはフートワークがよく、状況を即座に察知して、まさにフレキシブルに動けるというイ メージがある。私はゾウも好きであるが、カモシカにとても魅力を感じる。
3 「岩場の小さなカニ」モデル
・スモール・ビジネスをカモシカにたとえたのが、ドラッカーであるが、佐々徹(横浜商科大学教授)は海辺の岩場に生息している小さなカニにたとえている。 小さなカニをつかまえようとすると、すばやく逃げて姿を隠すのが巧妙であるという。小さなカニはまさにフレキシブル・マネジメントの天才であるといってよ い。なお、佐々のこの小さなカニについては斎藤毅憲著(2006年)『スモール・ビジネスの経営を考える』(文真堂)などを参照してほしい。
4 経営者にもとめられるものとは?
・もっとも、フレキシブルに動けるという対応能力、つまり“小回り性”の前提には、状況(環境変化)に即座に察知できる能力や判断能力・分析能力などが必 要になることはいうまでもない。これによると、小さいから、といってもすべてのスモール・ビジネスが“小回りがきく”ということはできないのである。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
[2015.3.15]
- 開催日2015年3月15日
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