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誌上テーマ別サロン】第58回 <基礎講座>   スモール・ビジネスの経営力強化のための行政支援を! ―「中小企業経営学入門」(58)―

【誌上テーマ別サロン】第58回
<基礎講座>
スモール・ビジネスの経営力強化のための行政支援を!
―「中小企業経営学入門」(58)―

1 成功しない行政の支援
・国や地方自治体などのスモール・ビジネスの支援には敬意を表している。多様な支援メニューを体系的に用意して、サポートの体制をつくりあげてきた。この支援をうけて存続を可能にしたり、成長できた企業も多かろう。実際に支援をうけて、本当によかったという企業の反応も筆者自身見聞きしてきた。
・しかしながら、このような行政の支援を知らないスモール・ビジネスも多い。行政は広報活動(パブリシティ)を展開して、スモール・ビジネスの支援策の周知をはかっているが、残念なことであるが、あまり知られていないのである。
・そして、行政の支援でもうひとつ考えておきたいのは、支援が思ったほどの成果をあげていないのではないか、ということである。農業の支援がうまくいってこなかったといわれるが、スモール・ビジネスの支援も同じように成功してこなかったように思われる。これには、スモール・ビジネスといっても、きわめて多様性に富んでいるだけでなく、その数も多く、個別のニーズにはどうしても対応できないというスモール・ビジネス側の事情もあるのかもしれない。

2 補助金支援の限界
・行政の支援のなかで、補助金を支払うものが結構ある。この補助金を活用して、新たな事業展開などができるので、スモール・ビジネスの経営者は、それなりの成果をあげることができる。しかし、補助金の期限が終了すると、おおむね自力で行うか、活動が終えるか、になってしまうのである。
・補助金を使って経営力強化のための人材育成を行うことができれば、すぐには役立たなくても将来的にはスモール・ビジネスの存続と成長に貢献できる。しかしながら、機械設備の新設・更新のための補助金であるとすれば、能率向上などには確かに役立つものの、経営者の経営力の強化には必ずしも直接的にはつながらないことが多い。

3 経営力強化の行政支援への転換
・スモール・ビジネスにとっての最大の経営資源は、経営者であるから、行政支援の重要なポイントは経営者の育成であり、それを通じた経営力の強化に力点をおかなければならない。行政の担当者はその点を十分に認識して行政支援をしてほしいとおもっている。
・冒頭に述べたように、行政の支援をうけて本当によかったという反応を知っているが、支援の内容を経営力の育成につながるものに移行することが大切になっている。要するに、経営力の高いスモール・ビジネスを育て、増やすことこそが、わが国にとっての急務なのである。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2019年9月5日
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