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【誌上テーマ別サロン】第94回 <基礎講座>   ものづくり企業のイノベーション(3) ―「中小企業経営学入門」(94)―
【誌上テーマ別サロン】第94回
<基礎講座>
  ものづくり企業のイノベーション(3)
―「中小企業経営学入門」(94)―
1 地域における菓子製造業者の存在
・地域には、小規模な菓子製造業者がビジネスを展開している。創業の古い和菓子だけでなく、現在では新規参入組のスウィート系業者の発展が目立っている。
・とくに城下町などの歴史のある都市は、京菓子、長崎カステラ、仙台駄菓子などのような「地域名菓」や「地域ブランド菓子」をもっているところが多い。そして、このように全国的に知られたものではないが、それぞれの地域には著名な菓子があり、名物ともいわれてきた。
2 佐世保の「(有)草加家」の事例
・創業してから約60年の長崎県佐世保市の草加家は、社名が示すように草加せんべいをつくっていた。その後、和菓子を追加するとともに、「かんころ餅」という主力商品を開発している。
・長崎県の五島列島などでは、うす切りにして、ゆでたサツマイモを天日ぼしにしたものを「かんころ」というが、ひきしまった甘みをもっている。このかんころをモチ米と一緒に蒸して杵(きね)でついて、かまぼこ型につくりあげたのが、「かんころ餅」である。
・かつては、この地域では“おやつ”として各家庭でつくられていたが、徐々につくられなくなり、同社がかわって生産・販売をになうようになった。
・創業者をついだ後継者は、既存の商品のラインナップだけでは企業としての存続はむずかしいと判断し、主にふたつの商品開発を行ってきた。
・ひとつは、五島列島の歴史と文化を研究し、この地方では赤ちゃんにかんころをおしゃぶりとして与えていたことを知り、「おしゃぶりかんころ」という赤ちゃん用のほしイモを開発している。
・普通のほしイモとちがって硬く、高品質なものを選び、赤ちゃんの手でももちやすいものにしている。かみつづけていくにつれて、サツマイモの甘さが口のなかで徐々に広がることになる。これにより赤ちゃんは笑顔になるという。
・そして、自社の店舗のほか、佐世保駅や長崎空港の売店でもセールスしたために、ヒット商品になっている。
・もうひとつは、地域資源の農産物の活用をはっかっている。長崎県はイチゴの産地であり、イチゴを煮つめて、ペースト状にして、マシュマロに練りこんだ菓子を開発している。それはお土産ものとして好評を博している。
・なお、自社の店舗脇で月1回「野菜びいき市場」という屋外マーケットを開催し、農業従事者と消費者、さらに加工業者が集まるネットワークの場をつくろうとしている。
3 地域の歴史や文化をふまえた事業展開を!
・歴史や文化などを含む地域の資源を調査し、見直すことで、ものづくりの新たな展開が可能になるであろう。自分の地域には、なにもないと考えてはならない。調べてみると、そして見方をいろいろ変えてみると必ずチャンスはあると考える。
               (2018.10.4稿)
           永続的成長企業ネットワーク 理事
           横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年7月5日
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