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【誌上テーマ別サロン】第91回 <基礎講座>   長寿スモール・ビジネスの事例 ―「中小企業経営学入門」(91)―
【誌上テーマ別サロン】第91回
<基礎講座>
  長寿スモール・ビジネスの事例
―「中小企業経営学入門」(91)―
1 圧倒的に多い社歴200年未満の長寿企業
・「人生100年時代」がいわれるようになったが、企業についても100年以上の社歴のものを「長寿企業」とすれば、200年までの企業が圧倒的に多く、それ以上の企業は、きわめて少ない。
・社寺建築の(株)金剛組(大阪府)の創立は578年であり、最も古いとされている。そして、武田信玄や徳川家康も利用した山梨県の(有)西山温泉慶雲館は705年、宮城県の(株)ホテル佐助は1,000年といわれている。
2 ㈱茶加藤の事例
・茶加藤は、神奈川県伊勢原市の長寿企業で、創業は1728(享保13)年である。お茶の販売にスタートしてから、約290年が経っている。現在、10代目の社長が就任しているが、社長は「加藤宗兵衛」の名をつぐことになっている。
・伊勢原市は、お茶の産地ではない。しかし、江戸時代には「大山参り」に訪れる人びとが多くなり、このような人たちに同社はお茶をだしていたという。
・現在、伊勢原だけでなく、小田原、平塚、厚木などに店舗をもち、静岡茶などを主に扱っている。
・日本茶をとりまく環境は、きわめてきびしい状況にある。日本人のライフスタイルが変化し、お茶を家庭で飲む文化が少なくなってきた。かつては高齢者を中心に家庭がそろって食事を行い、お茶を飲んでいたが、そのような生活が減少した。かわって台頭した核家族化のなかではお茶を入れることより、コーヒーやソフトドリンクなどを飲むことが進行した。
・これに関連して、ギフト商品の多様化のなかで、ギフトのメイン商品であったお茶がそのポジションを低下させてきた。さらに、大手飲料メーカーがペットボトルのお茶を販売してきたことも、状況をきびしくしてきた。
・このようななかで、同社は、日本茶に親しみを感じていない世代に、いわゆる“リーフのお茶”の魅力をアピールすることに力を入れている。お茶を入れることには、確かに手間や時間はかかるが、お茶は生活を豊かにするという価値を同社は強く訴えようとしている。また、「このお菓子には、このお茶を!」、「このお料理には、このお茶があう!」といった情報を提供し、若い世代にお茶を飲む文化を復興させようとしている。
3 日本人の生活の見直し提案
・日本人のもってきた文化への関心が日本食などを中心に世界的に高まっており、お茶を飲む文化の復興には、現在はタイムリーである。きわめて大きな成長はむずかしいが、生き残りのためには、このチャンスを有効に活かしていくことがもとめられている。
               (2018.10.6稿)
           永続的成長企業ネットワーク 理事
           横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年5月5日
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