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【誌上テーマ別サロン】第89回 <基礎講座>   農山漁村地域再生のためのスモール・ビジネス ―「中小企業経営学入門」(89)―
【誌上テーマ別サロン】第89回
<基礎講座>
  農山漁村地域再生のためのスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(89)―
1 農山漁村地域の衰退
・わが国では、第2次世界大戦後の経済の高度成長以降、地方とか、田舎などの農山漁村地域の衰退が進行してきた。農山漁村地域の若者が大都市圏の企業に吸収され、そこで働くことになった。
・企業誘致を行い、若者の足どめに成功した地域も確かにあった。しかし、グローバリゼーションの進行などにより、撤退を余儀なくされた企業も多く、誘致政策は必ずしも成功したといえない。
・また、人口の高齢化とともに、高齢者の多死化も顕著となり、人口の減少が急速に進んでいる。農林業、漁業の担い手の平均年齢は高まり、後継者の不足は目立っている。また、小売業と商店街もかつての勢いを失い、シャッター通りや空き店舗が増加し、目に見えて衰退している。
2 “自立化”志向の動きに注目しよう!
・もっとも、このようななかで、再生の動きも見られている。それぞれの地域には主に農産物、水産物などの独自の「地域資源」があり、これを利用した商品づくりを行い、できれば「地域ブランド」に育てていこうというムーブメントが発生している。要するに、農山漁村地域には、食生活を支える多種多様な商品や工芸品などが開発されており、産地間の競争もきびしくなっている。
・このようなムーブメントの担い手は、地域の人びとのつくるスモール・ビジネスとそのネットワークである。これらのスモール・ビジネスは、企業誘致政策の挫折のなかで、“自立化”への志向を強くもっており、規模拡大よりも確実な市場獲得によるビジネスとしての継続に力を注いでいる。
・このようなムーブメントを支えるスモール・ビジネスの自立が地域の再生に役立つことであろう。そのためには、大都市圏の消費者のこれまで以上の支援が必要になろう。
3 「地域の問題」のビジネス化を!
・地域の衰退をくいとめるためのもうひとつの方策は、地域に発生している問題を発見して、その解決をビジネスにしていくことである。農山漁村地域には、多くの問題があるから、ビジネス・チャンスは無限にあるといってよい。
・市場は大きくないかもしれないが、問題の数は多いから、いくつかの問題をまとめて解決しようと考えるならば、生活を保障する収入は得られることであろう。このようなスモール・ビジネスの担い手は、「社会起業家」とか、「ソーシャル・ビジネス」といわれるが、起業家精神をもつ、このような担い手も台頭しており、地方の再生や活性化に貢献している。
               (2018.9.5稿)
           永続的成長企業ネットワーク 理事
           横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年4月5日
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