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【誌上テーマ別サロン】第88回 <基礎講座>   利益を獲得しつづけることのむずかしさ ―「中小企業経営学入門」(88)―
【誌上テーマ別サロン】第88回
<基礎講座>
  利益を獲得しつづけることのむずかしさ
―「中小企業経営学入門」(88)―
1 親友の経営者に学ぶ
・郷里の親友に、みずから起業し、長いこと経営者として活躍している人がいる。柔道を行っていたスポーツマンであり、明るく、元気で、どんなときにも前向きな姿勢をとっている姿は、美しく、いつも敬服している。そして、彼は友人や知人などをとても大切にしている。
・しかし、一方的に情に流されることはなく、状況を客観的に分析して、適切に判断している。地方ではどうしても人間関係のつながりが大切なために、「論」よりも「情」が支配してしまうことがあるが、その辺のバランスというか、見きわめがみごとな人物であると思っている。
・主なビジネスは、店舗や倉庫などへの冷凍機器の設置や修理である。第2次世界大戦とりわけ経済の高度成長の前後から、消費者の生活は冷蔵庫などの電化製品の購入により豊かで便利になった。
・そして、他方食品を販売する小売業者や倉庫・流通業者なども冷凍機器を必要としてきた。たとえば、スーパーマーケットに入ると、食品部門は冷房がきいているだけでなく、食品の鮮度を守るために大量の大型の冷凍機器を設置している。B to Bの彼のビジネスは、時流にあわせて、このようなことをメインにしてきた。
2 リターン(報酬)を得る努力
・B to Bのビジネスを継続していくためには、人間関係を大切にして、クライアントとなるBについてのいろいろな情報をたえず収集し、クライアントづくりを行わなければならないと思われる。
・個人の消費者ではなく、業者(B)がクライアントであり、クライアントの数は電器小売業の消費者にくらべると、はるかに少ないが、このクライアント関係をしっかりつくりあげることがリターン(報酬)としての利益や売上高を得るために重要になる。そして、クライアントの信用を失ってしまうと、リターンを獲得することがむずかしくなる。
3 利益の獲得をつづけることはむずかしい!
・親友の会話のなかで耳の残っている言葉に「利益を獲得しつづけることはむずかしい」がある。“クライアント・ファースト”の立場からしっかりとした仕事を遂行して、クライアントの信用を得ることが大切なのであろう。寄付などの「地域貢献」ができるのも、利益の獲得をつづけているからであり、利益が得られなくなることの危機感はつねにもっているように見えた。
・かなり前のことになるが、業績が不振で、利益があまり得ることができず、社長も従業員も同額の低い収入でがまんしなければならないことがあったことを聞いた。このときの彼の決定がどのような意図で行われたかは聞かなかったが、それは社内での危機感の共有化と労使の一体感の強化におそらく貢献したものと思われる。
                (2018.9.5稿)
           永続的成長企業ネットワーク 理事
           横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年3月20日
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