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【誌上テーマ別サロン】第87回 <基礎講座>   地域の規模からみたスモール・ビジネス ―「中小企業経営学入門」(87)―
【誌上テーマ別サロン】第87回
<基礎講座>
  地域の規模からみたスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(87)―
1 地域の規模を考える
・基礎自治体つまり市町村の規模には、いうまでもないがちがいがある。平成の大合併が行われた結果、町村が減少し、合併した市の地理的な規模は拡大したケースが多い。もっとも、合併せずに、町や村として存在しつづけている自治体もある。
・この基礎自治体を中心に地域を考えると、そこに人びとが生活し、そして企業が活動を行っている。人びとが住んでいるということから見ると、「人口」という考えがでてくる。人口が多いとか、少ないとか、あるいは減少が激しいといわれる。また、都市地域では人口密度が多く、これに対して農山漁村地域では少ない。
・そして、地域には、いろいろな産業の企業が活動している。この企業活動がその地域の経済を支え、人びとの生活の向上にかかわっている。したがって、企業の数が増加したり、企業規模が拡大すると、その地域の経済力は向上する。また、どのような産業が多いか、少ないとか、あるいはユニークな技術や製品をつくっていることで、地域の特性が生まれてくる。
2 人口が少ない地域におけるスモール・ビジネス
・ところで、人口が少ない地域ではスモール・ビジネスといっても、人口が多いところとちがった意味をもっている。
たとえば、人口50万人都市の50名の従業員の企業と、5,000人の人口の50名の企業を比較してみよう。同じ50名の人びとが働いており、規模的には同じくスモール・ビジネスである。おそらく、50万都市では、これ以上の規模のものも多く存在している。
・しかし、人口5,000人の地域では、この企業は地域の有力企業になっているかもしれない。つまり、その地域にとって、その企業は地域のプライドとなる“ビック・ビジネス”であり、地域の経済力を支える存在になっている。
・雇用面で見ても、住民の100人に1名がこの企業で雇われ、働いており、これに対して50万都市の場合には、1,000人に1名が働いているにすぎないことがわかる。これは、あまりに単純な比較であるが、地域全体への貢献でいうと、5,000人に対する50名のほうが明らかに大きいことになる。
3 「単純な一律主義」の議論はやめよう!
・このようにいてくると、一律に50名だから、スモール・ビジネスであるという決めつけ方はやめたほうがよいであろう。国の産業政策や大企業中心の議論からすれば、それは確かにスモール・ビジネスなのかもしれない。だが、それは一方的な見方であり、企業が立地している地域の規模や産業の特性などの観点を重視しなければならない。要するに、規模が大きいか、小さいかの議論は、このような地域の規模との関係から行う必要がある。                                                            (2018.9.5稿)
           永続的成長企業ネットワーク 理事
           横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年3月5日
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