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【誌上テーマ別サロン】第85回 <基礎講座>    伝統商品のイノベーション(1) ―「中小企業経営学入門」(85)―
【誌上テーマ別サロン】第85回
<基礎講座>
  伝統商品のイノベーション(1)
―「中小企業経営学入門」(85)―
1 「南部せんべい」を変えた巖手屋の事例
・岩手県の伝統的なブランドとして、「南部せんべい」があった。主に落花生(ピーナツ)とゴマの入った2種類が伝統的なものであり、味は素朴で淡泊であった。
・あまくも、からくもないので、食べなれた高齢者の口にはあうが、若い世代には好まれてこなかった。そこで、地元でもあまり小売店舗では見られないものになっていたように思われる。
・巖手屋(いわてや)は、岩手県の県北の二戸市に本社をおく企業であるが、南部せんべいのイノベーションをはかってきた。たとえば、「まめごろう」は、落花生が入っているが、クッキー風といえるもので、人気商品になっている。昔の人は「まめで達者でまめごろう」といったが、若い世代にもきわめて好評な商品である。
・そして、岩手県産の素材を利用したりんごせんべい、かぼちゃせんべい、えびせんべい、など多くの商品開発を行い、かつての少品種から多品種へと転換をはかっている。また、チョコレート入れの商品(「チョコ南部」)も開発され、商品のライン・アップを大幅に増加させてきた。
・以上のようにして、同社はこれまでの南部せんべいのこれまでのイメージを変え、多くの顧客をうけいれるようなイノベーション(工夫と努力)を行ってきた。
2 落花生のオリジナル商品を開発する芳甘菓豆芳の事例
・神奈川県の秦野市は、落花生の栽培に適した地であり、大正時代から「相州落花生」のブランドでつくられ、その後、落花生は土質が類似している千葉県や茨城県にも拡がってきた。
・手むき原料の落花生は、風味があり、これに100年以上をかけてきた「秦野の煎り豆」の加工技術がくわわり、「おいしい落花生」がつくられてきた。そして、メインの顧客層は、50代後半から70代の人びとであった。
・豆芳は、メインの顧客層のなかには歯科医で治療中の人びとがいたり、間食をしない人びとが多くなっていることを考慮して、落花生のおいしさを維持しながら、やわらかく食べられるようにするために、「どら焼き」や「もなか」を開発してきた。
・そして、新しい顧客としての若いミセスや子どもたちのために、「サブレ」などをつくり、顧客層の拡大を目ざしている。さらに、「お茶」、「さつまいも」、「ゆず」などの地元の素材にも注目して、それらをいかした商品開発にもつとめている。以上のようにして、同社はイノベーションを行っている。
3 イノベーションこそ伝統をつなぐ
・2社の事例をみてくると、現状打破し、新しいことを試みることが大切なことが分かる。そして、イノベーションを行うことで、これまでの伝統を変えつつ、企業として存続している。
                                           (2018.9.5稿)
          永続的成長企業ネットワーク 理事
          横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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  • 開催日2021年2月5日
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