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【誌上テーマ別サロン】第81回 <基礎講座>   「ちがいをつくる」イノベーション ―「中小企業経営学入門」(81)―
【誌上テーマ別サロン】第81回
<基礎講座>
  「ちがいをつくる」イノベーション
―「中小企業経営学入門」(81)―
1 「ちがいをつくる」戦略
・自社のとり扱う製品やサービスが他社のものとちがうことを消費者・利用者に認めてもらい、しかも“いいもの”であると評価してもらうためには、どうすればよいのであろうか。これが製品やサービスの購入のための前提となる。
・このちがいをつくることを大切にするのが、「差別化戦略」である。同じ製品を他社よりも低価格で売るならば、価格がちがいであり、勝負の決め手となる。そして、価格でちがいをつくる企業は多い。
・しかし、品質や機能などにちがいを求めようとする企業も同じように多い。低価格にするためには、低コスト・低生産費にしなければならないので、原材料の調達や生産面でコスト抑制だけのためにイノベーションを行う必要があるので、どうしても長つづきすることができなくなるが、これは品質や機能の向上を多様なかたちで工夫することで可能となる。つまり、これは、まさに「ちがいをつくる」イノベーションである。
2 ひみつ堂の差別化に学ぶ
・森西浩二著『ひみつ堂のヒミツ―1000円のかき氷を一日500杯売り続けられる理由―』(Du BOOKS)が、これを考えるうえで有益である。
・東京都台東区谷中のひみつ堂は、20席ほどの小店舗のスモール・ビジネスで、かき氷がメイン商品である。かき氷は在庫ができない、年中売れるものではない、天気によって左右される。ちがいがだすことができないので、高く売ることができないものである。これを打破したのが、ひみつ堂である。
・1,000円のかき氷を食べるために、夏には700人、冬でも400人が来店するという。氷を削り、シロップをかけるだけの単純な商品であるが、シロップには同業者に見られない差別化へのこだわりがある。西表(いりおもて)島のピーチパイン、北海道産のかぼちゃなど、100種類以上のものが用意されている。四季を通じた多くのシロップは、魅力であるとともに、おいしさをつくりだしている。しかも、シロップは自家製であり、添加物は使っていないので、安心である。
・さらに、提供されるメニュは、毎日変えており、SNSで公表されている。これによってリピーターを確保できるようにしている。
・このようにして、ひみつ堂は明らかに同業者とは異なるちがいをつくり、これを来店者に認めてもらっている。かき氷は暑い夏の風物ともいうべき季節商品であったが、それを変えるイノベーションをひみつ堂は起こしたのである。
3 ちがいを考えるクセを!
・ひみつ堂の成功は、低価格ではなく、品質や機能面においてちがいをつくったことで得られた。しかし、これは同業者などに模倣される可能性が高い。そこで、さらにちがいをつくることを考えていかなければならない。一時の成功に浮かれてはならず、ちがいを考え続けることが大切である。
・なお、ひみつ堂の経験は、所得が高く、人口の多い大都市地域では通用するが、衰退しているといわれる地方でもすべて成功するとは必ずしもいえないように思われる。
                             (2018.4.9稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
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Information
  • 開催日2020年11月20日
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