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【誌上テーマ別サロン】第73回 <基礎講座>   変わることへの挑戦を! ―「中小企業経営学入門」(73)―

【誌上テーマ別サロン】第73回
<基礎講座>
変わることへの挑戦を!
―「中小企業経営学入門」(73)―

1 「無常迅速」の時代の継続
・変化の時代である。筆者がかつて使っていた「無常迅速」もこれを示している。同じ状態はつづかず、常に変化する(「無常」)とともに、変化のスピードは早い(「迅速」)。
・したがって、現在は企業経営がうまくいっていても、それが長期にわたって継続する保証はない。メイン(主力)となる製品やサービスがいつまでも売れると考えることはできず、意外と早くライフサイクル(寿命)を終えるかもしれない。技術や製品の開発がきびしい競争環境で行われているだけでなく、消費者のニーズもこのようななかでは変化しやすい。目うつりする製品やサービスは多く、消費者には選択の可能性が大きく開かれている。

2 「固定観念」を疑う!
・このような環境のもとでは自社の経営に関する現にある固定観念とか、常識といったものを疑ってみることが大切である。歴史のある大規模組織では、このような疑問(ダウト)を全社的にもつことはきわめて困難であるが、スモール・ビジネスの場合には、経営者の考え方ひとつで、“疑う”文化をつくることが比較的容易にできるであろう。
・現在、企業経営がうまくいっているとしても、少し長期的な視点から、それを疑ってみることである。当然のことながら、うまくいっていないならば、なにが問題なのかを明らかにすることである。冒頭で述べたが、環境は変化しているから、自社の経営にかかわる環境の変化をしっかり調査し、自社にとってのチャンスとともにピンチを認識しなければならない。
・しかし、それだけでなく、ヒト、モノ、カネ、情報などの自社の経営資源の現状を冷静にとらえる必要があり、それによって思ったよりも能力のある人材がいることがわかったり、これまではっきりしていなかった経営上のボトルネック(弱点)が表面化してくる。既存のスモール・ビジネスの変わることへの挑戦、つまりイノベーションは、まさにここを出発点にしなければならない。

3 変わるための「構想づくり」
・変わることのシンボルとなる発明や発見には、“ヒョウタンからコマ”のような偶然的な要素も確かに見られるが、このような偶然に頼らずに、環境と経営資源の検討にもとづき、どのように変わるのかを考えることが大切である。環境におけるチャンスやピンチの認識と自社の経営資源の強み・長所などを結びつけてみれば、どのように変わるかの構想―コンセプトやアイデア―をつくったり、見つけることができる。これは、変わるための確実な方法であり、基本である。
・もっとも、経験があるだけでなく、前向きに企業経営にとり組み、自社の将来の可能性を考えている経営者は、このような方法だけでなく、自分のもっている“直観力”とか、“ヒラメキ”をも大切にしている。確実な方法とは、いわば熟慮の結果であり、よく考えられた構想であるのに対して、これにはあまり「考えられていない」という不確実な要素が含まれている。そして、このような考えられていないことも、イノベーションにはあると考える。
(2018.4.5稿)

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲

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  • 開催日2020年7月20日
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