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【誌上テーマ別サロン】第72回 <基礎講座>   スモール・ビジネスによるイノベーション ―「中小企業経営学入門」(72)―

【誌上テーマ別サロン】第72回
<基礎講座>
スモール・ビジネスによるイノベーション
―「中小企業経営学入門」(72)―

1 大企業はスモール・ビジネスのイノベーションの成果である
・イノベーションは経営資源に余裕がある大企業において可能になるという見方がある。確かに、資金的にみても、情報の収集においても、さらに人的資源(ヒューマン・リソース)の面でも大企業のほうがスモール・ビジネスに対して優位にあるといえる。しかし、そのような大企業も創業当時はスモール・ビジネスであり、革新的(イノベーティブ)な製品やサービスを開発したり、それまでになかったようなマネジメント(経営)を実施し、それに成功している。もっとも、大企業にまで成長するには、“運”ともいわれるようなチャンスを生かすとともに、その都度イノベーションを起してきた。
・要するに、おおむね大企業はスモール・ビジネスの行ったイノベーションがうまくいった成果(アウトカム)といってよい。そこで、イノベーションができなければ、スモール・ビジネスは大きくなることはできないだけでなく、生き残りさえむずかしいと考えるべきである。

2 多忙なルーチンのもつ「問題性」
・スモール・ビジネスは人的資源の面でも、その調達は容易ではない。その結果、経営者は何人分かの仕事を遂行しなければならず、多忙な日常業務つまりルーチンにどうしても追われがちである。別の言葉でいうと、絶えず発生する多種多様な問題に対決して、時間をかけずに解決することが求められている。
・このようななかでは、じっくり思考するとか、他人の意見を参考にする余裕が少なくなるおそれが生じる。その場その場での「即答」は必要だし、行わなければならないが、即答しつつも、他方でそれが本当にいい回答であるのか、本当に問題はなになのかを考えてみることも大切である。
・ルーチンに追われるなかでは問題の本質がどうしてもとらえられなくなってしまう。本当は問題をしっかりとらえ、対応を見直したり、大胆に変えてみる必要があるのに、それができなくなる“自分”を少し心配してみることが必要になる。

3 「発想」や「思考」を変えてみる!
・環境が激変する時代である。変わらないことや変えてはならないこともあるが、変化が常態であり、激動下に発生する問題への対応も新たに考える必要があるため、必然的に変わっていかなければならない。これが「現代の常識」であり、これまでのやり方に固執せずに、なにか別の回答がないかを考えてみることである。
・たとえば、スモール・ビジネスは、企業経営が日々多忙で、大変なので地域貢献ができないと考えられている。しかし、それは、明らかにまちがいである。スモール・ビジネスは、大企業と異なり地域に支えられ、地域に密着して活動していると考えるから、小さなことでも地域貢献を行い、それを地域住民に認めてもらい、いい企業であると評価されることのほうが大切である。スモール・ビジネスが、イノベーションを起こすには、これまでの発想や思考をちょっと変えてみることがスタートである。横浜型地域貢献企業制度でプレミアム表彰をうけたスリーハイの男澤誠社長(http:/www.threehigh.co.jp/)のスタートも、そのようなものであろう。
(2018.4.6稿)

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2020年7月5日
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