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【誌上テーマ別サロン】第70回 <基礎講座>   来街者の増加と商店街イベントの開催 ―「中小企業経営学入門」(70)―

【誌上テーマ別サロン】第70回
<基礎講座>
来街者の増加と商店街イベントの開催
―「中小企業経営学入門」(70)―

1 商店街の衰退
・商業や小売業の環境変化は、はげしいために、昭和40(1965)年代まで、大きな力を発揮し、消費者の生活を支えてきた商店街が、かつての勢いを失い、現在ではその多くが衰退してきた。とくに人口が減少してきた地方の都市では、その傾向が著しく、買物難民が出現している状況である。それは大きな社会問題であり、「移動スーパー・とくしまる」のようなビジネス・モデルが、その解決のために展開されはじめている。

2 「人を呼びこむ」の方法の事例
・日々の営業活動に追われているために、どうしても視野が狭くなったり、短期的な観点になってしまうのは仕方がないが、少し日々のことから離れて、広い立場からものごとを見ることも大切である。たとえば、自分の店舗に来店者を増やすことを考えることがもっとも必要なことであるが、商店街に人を呼びこむために、どのようにしたらよいかを思ってみることである。
・私の住んでいる横浜市戸塚区では、駅前のふたつの商店街が年2回ほど、「遊山箱」というイベントを行っているが、近年多くの来街者を集めている。子どもたちは「遊山箱」という小さな箱を事前に500円で購入して、これと参加店をまわって歩いたことを証明するスタンプラリー表をもってイベントに参加している店舗に出むき、スタンプを押してもらうのである。各店舗にはシールが用意されており、こどもたちは遊山箱にシールをはり、思うがままに自分の箱をつくりあげている。そして、子ども用の遊びを用意したり、ちょっとしたものをプレゼントしている。スタンプラリー表にスタンプが沢山つくようになると、記念品をもらえることになっている。
・小学校の低学年までの子どもが多く参加している。当然のことながら若い両親の同伴も多く、商店街は来街者でにぎあいを見せている。私も子どもたちのあとをついていったが、意外といつも歩いている商店街のことをあまり知らないことを実感できた。こういうイベントがなければ決して入ることがない店舗も見ることができたのである。これは、来街者にとっては発見の場であり、商店街の魅力をアピールできるチャンスになる。

3 コラボレーションの重要性
・イベント開催に大切なのは、商店街内部の協力である。できるだけ多くの店舗が参加し、それぞれの店舗の個性をアピールすることである。戸塚区の場合、仏具店も参加しており、子どもにアピールしにくい店舗でも、参加している。また、寺院、特定郵便局、政党の事務所など、ビジネスに関係していない地域のステイクホルダーも参加しており、店舗だけがイベントを支えているわけでないことがわかる。そして、地元の大学生などがボランティアとして各店舗の支援や見まわりに従事しており、お祭りをしているという雰囲気がかもしだされていた。その意味では、商店街の内部だけでなく、周辺の人びとや団体とのコラボレーションが大切なのである。
(2018.3.8稿)

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2020年6月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用