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【誌上テーマ別サロン】第67回 <基礎講座>   「大廃業時代」に対応する大学の任務 ―「中小企業経営学入門」(67)―

【誌上テーマ別サロン】第67回
<基礎講座>
「大廃業時代」に対応する大学の任務
―「中小企業経営学入門」(67)―

1 「大廃業時代」の大学の任務
・中小企業の廃業が大規模に進展する現状のなかで、ビジネス系大学教育は、これへの対応を急がなければならない。これには、実家などの経営を将来担う後継者の育成だけでなく、インターンシップ制度や起業家育成の教育プログラムを強力に推進することが求められている。2 中小企業におけるインターンシップの推進
・経営に前向きな中小企業のなかに、大学生や専門学校生のインターンシップに積極的な企業が見られるようになった。そして、短期ではなく、比較的長期なプログラムを採用して、ルーチン的な業務を習得させるだけでなく、若い人たちにアイデアや工夫を提案させるような仕事を割りあてているところもある。このような企業をインターンシップを行うことで、学生の中小企業に対するイメージも確実に変わるのであろう。
・地域密着の中小企業の経営者は、地域貢献の意識が強く、地元の小学校や中学校などの教育支援をいろいろなかたちで行っており、その点では評価したいが、できれば大学生のインターンシップの場を提供してほしいと考える。インターンシップは若い学生に大学で得られない現場の実態を教え、かれらを育てるとともに、受け入れる企業も学生との接触のなかで確実に得られるものがある。そして、それには企業としての将来の展望にかかわるものが必ずあるだろう。
・中小企業の経営者には、大学生のインターンシップの導入に積極的になってほしいとともに、大学側も、これを推進することが不可欠である。

3 起業家育成の教育プログラムの必須化
・ビジネス系の大学教育をみると、起業家育成やベンチャー・ビジネスなどの科目が開設されるようになり、カリキュラム上では、各大学ともかなり整備されてきたといえる。その点では一応の評価を行うことはできる。
・しかし、いっそうの推進が求められている。私が主張したいのは、「起業プラン」を作成することを必須科目にすることである。かつてのような「卒業論文」ではなく、卒業研究として起業プランを入学する学生全員に義務づけることが「開業」を増やし、「大廃業時代」を乗り切るためには必要になると考える。「廃業」を上回わる「開業」を増やしていくことが大切である。そして、ビジネス系の教員は、経営以前に「起業」があることを自覚し、起業家育成にあたることが求められている。
・なお、起業家育成を重視する際には、あわせて「キャリア教育」の視点を考えなくてはならない。これまでわが国では「働く」ことは、企業に「雇われて働く」ことであったが、「起業する」こと、「自営する」ことも働くことに含まれているということである。そして、経営とは雇われて働くことでなく、人を雇って働くことであることを銘記しておきたい。
(2017.12.6稿)

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2020年4月5日
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