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【誌上テーマ別サロン】第66回 <基礎講座>   後継者育成への大学のあるべき対応策 ―「中小企業経営学入門」(66)―

【誌上テーマ別サロン】第66回
<基礎講座>
後継者育成への大学のあるべき対応策
―「中小企業経営学入門」(66)―

1 私の「後継者育成」の経験
・私のキャリアのなかで、中小企業の後継者育成に数度かかわったことがある。最初は1980年末から90年代の前半にかけての中小企業大学校東京校であり、第2は90年代後半から2000年代前半までの神奈川県中小企業センターである。さらに関東学院大学経済学部(2009~2012年度)が3度目の経験である。1回目と2回目は、社会人つまりビジネス・パーソンが相手であったが3度目は大学生(学部学生)であった。
・大学で後継者育成が本当にできるかどうか、当初心配であった。「自分の実家を承継する学生」に受講してほしいと明確に条件をつけたのであるが、実際履習した学生の3分の1ぐらいは自営業者ではなかった。実家のビジネスを直接に分析・検討させ、改善策をつくることが目的であったので、学生の履習の意図をはかりかねたものである。
・そこで、そのような学生にはアルバイトを行っている企業の後継者になったと仮定して考えてほしいと要望して、履習を認めることにした。しかし、収集できる企業情報の質量についていえば、実家のビジネスとアルバイト先では、かなりの差があったし、授業の取組みにも両者にちがいが見られていた。2 ビジネス系大学教育への大幅な導入
・中小企業の後継者が未定で、「大廃業時代」が到来するというショッキングな予測がされているなかで、ビジネス系の大学教育は「中小企業経営学」を必須科目とするとともに、「後継者育成」に関する実習科目や演習(ゼミナール)を開設することが急務であると考える。
・経営学は、大企業の経営を中心につくられてきた。そして、大学のビジネス系教育はこの大企業をめぐって教授され、強い大企業をつくることをめざしてきた。確かに、このような経営学も必要であるが、もうひとつの重要なコア(中核)として、中小企業の経営学を展開し、後継者を育成するという視点を大幅にとり入れることが求められている。
・「大廃業時代」の到来だけでなく、わが国の企業の99%以上が中小企業であり、中小企業で働く人びとの比率が70%になっているという実態を依然として無視して、大企業にのみ専念している経営学の姿は、きわめて「奇異」といわなければならない。要するに、大学は大きく変わることが求められている。

3 外部教員採用の重要性
・以上、大学のビジネス系教育に中小企業の経営学に関する科目や後継者育成の授業を大幅にとり入れることを主張したいが、現有のスタッフで対処がむずかしいのであれば、とりあえず外部人材を採用していくことが大切になる。具体的には、中小企業診断士などのマネジメント・コンサルタント、中小企業の経営に精通している専門家、現に活躍している中小企業経営者などを教員として招へいして、きびしい「大廃業時代」に立ち向かうことが急務なのである。
(2017.12.6稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2020年3月20日
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