サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第59回 <基礎講座>   スモール・ビジネスの経営者の「やめどき」 ―「中小企業経営学入門」(59)―

【誌上テーマ別サロン】第59回
<基礎講座>
スモール・ビジネスの経営者の「やめどき」
―「中小企業経営学入門」(59)―

1 「やめられない」という気持ち
・スモール・ビジネスの経営者は、高齢になっても、なかなか引退できず、やめられない。自分がオーナーであるだけでなく長年、経営にたずさわり、育ててきた企業だけに、愛着もあってやめることができない。
・また、後継者が実際のところ見つからないとか、いてもまだ育っていないと思えば、事実上やめることはできない。さらに、経営にある程度の見通しがつけられればやめることもできるが、若干不安があって陣頭指揮をとっていたほうがよいと思っているかもしれない。あるいは、いろいろなビジネスの種をまいているとすれば、その芽がどのように生育するかをみてみたいと考えていることであろう。

2 「やめどき」とは?
・それでは、やめどきは、どのように考えればよいのであろうか。たとえば、体力的にみると、70歳を超えると経営を行うのはむずかしくなる。スモール・ビジネスでは70歳を超えても元気で、がんばっている経営者はいるが、体力的な衰えは、やめどきの重要なキッカケになる。
・また、自社の継続と成長を願っているならば、後継者育成の考え方を大切にして、それを実行していくことが大切である。「後顧にうれいなし」にしておくのである。子どもと同じように、いつまでたっても後継者を信頼できない気持ちになっているのであろうが、意外と育っているものである。そして、最初からうまくいかないこともあるが、やらせて経験を積ませることが重要なのである。
・むしろ現代のように、市場や技術が大きく動いていくような状況にあっては、若い後継者にバトン・タッチすることも考慮すべきである。製品の革新、IT化、グローバル化などのなかで、ビジネス・モデルの変更がもとめられており、このような変化を十分に把握できていない場合には、まさに「やめどき」が到来していると。

3 「一区切り」という考え方
・やめどきに関係して一区切りをつけるという考え方がある。ある仕事を完遂したことを一区切りにして、経営者を退くというものである。この場合、完遂した仕事が経営者本人にどのような意味をもっているかが、大切である。どうみてもささやかな仕事であるように思われるならば、そうかんたんに一区切りにはできず、もう少しビックな仕事を達成して、やめたいと思うかもしれない。しかし、そのようなささやかな仕事でも本人にとって価値がある場合には、一区切りにすることができる。
・要は、行っている仕事が経営者本人にとって重要であり、価値があるとすれば、その仕事の完遂は、仕事をなしとげたという達成感や自己満足につながり、一区切りできるものになる。もっとも、その完遂がつぎの仕事への動機づけに強烈につながるような場合、なかなかやめることができないかもしれない。このような場合には、いったんやめて新しい企業を起こすことも考えられる。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

Information
  • 開催日2019年10月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用