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【誌上テーマ別サロン】第56回 <基礎講座>   事業承継の対象はだれか ―「中小企業経営学入門」(56)―

【誌上テーマ別サロン】第56回
<基礎講座>
事業承継の対象はだれか
―「中小企業経営学入門」(56)―

1 事業承継の願望はどのくらいあるのか
・神奈川産業振興センターが平成28年1月に実施した回答企業2,841社(回収率16.6%)の調査によると、「ぜひ事業承継したい」が43.5%、「できればしたい」が22.0%であり、約3分の2のスモール・ビジネスが企業としての継続を希望している。これに対して、「希望しない」が15.8%、「後継者がいなければ廃業する」が11.7%であり、約27%が承継に否定的であったり、消極的になっている。未回答企業の反応が知りたいところであるが、回答企業については承継に前向きであることがわかる。

2 承継の主な対象
・後継者が決まっている企業は52.6%で、決まっていないのは40.9%であるから、決まっているほうが多くなっている。前者の決まっている場合、「子どもなどの親族」が85.6%、「親族以外の役員・従業員」が10.7%であり、親族と関係者が承継の対象になっている。これに対して「親族以外の第3者」は3.2%と、わずかにすぎない。もっとも、この数字は今後どのようになっていくのであろうか。
・後者の決まっていない場合の承継希望の対象をみると、親族への機会が少ないのであろうか、「役員・従業員への承継」が20.7%と、「親族内承継」の15.0%よりも多くなっている。他方で、「廃業」が23.9%、「承継について考えていない」が13.5%になっており、両者で承継希望が明らかな企業とほぼ同じ水準になっている。なお、廃業を検討している理由については、「事業に将来性がない」(47.1%)をトップに、「後継者が見つからない」(18.7%)、「後継者の候補が継ぐ意志がない」(10.1%)、「従業員の確保が困難」(4.0%)、「地域に需要・発展性がない」(3.2%)がつづいている。

3 外部への承継はあるのか
・この後者の決まっていない場合に、外部へのオープン化はどのようになっているのであろうか。「事業譲渡」が11.1%になっているから、1割前後は他社への譲渡が考えられていることがわかる。そして、「外部からの後継者の招へい」が3.8%になっており、外部の経営資源を活用しようとしている。
・親族や親族以外の役員・従業員(関係者)への承継が無理であるならば、外部への承継を考えるのも当然のことである。廃業ではなく、自社の存続を考え、事業の持続的成長を願うのであれば、他社への事業譲渡や外部からの後継者の招へいを行うことはごくあたり前の選択になるであろう。確かに、自分の会社であり、愛着もあるが、後継者が見つからずに決まっていないのであれば、このようなオープンな選択を行うことも必要である。自分の代で廃業せずに、前向きになり、事業の持続を考えるべきである。
・神奈川県をはじめとして、地方自治体のなかには事業引継ぎ支援センターを設けるところがあるが、このような外部への承継に大きな力を是非とも発揮してほしいものである。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2019年7月5日
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