【誌上テーマ別サロン】第47回
<基礎講座>
スモール・ビジネスの地域密着性(2)
―「中小企業経営学入門」(47)―
1 調達市場および販売市場の「特定地域化」
・スモール・ビジネスの地域密着性をもつ地域企業という特徴を考えるときに、調達市場および販売市場の「特定地域化」を明らかにしておかなければならない。これは、スモール・ビジネスが自社の製品やサービスを開発・製造するために必要な経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)の“かなりの部分”を特定の地域内から調達し、そして完成した製品やサービスの同じく“かなりの部分”をその特定地域内で販売していることを意味している。
・ここでいう“かなりの部分”のウエイトが多くなると、地域への依存が高まり、地域密着度が深くなることになる。それは地域貢献度が高くなることでもある。
要するに、必要な経営資源を特定の地域で調達し、販売もこの地域で行うというのが、ここでいう調達市場および販売市場の特定地域化なのである。いわゆる「地産地消型」の地域貢献企業がスモール・ビジネスの典型的なイメージといってよいであろう。
2 調達市場および販売市場の外部地域依存
・もっとも、経営資源によっては特定地域での調達がむずかしく、外部から調達しなければならないことも多い。そして、地域の資源を使用した地産はできたとしても、地域の市場が小さいために、外部の市場に売りこむほうのウエイトが大きいことも当然のことながらある。
・むしろ、このようなこともごく一般的に行われており、調達も販売も特定の地域内に限定されるという純粋の地産地消型は、きわめて少ないのかもしれない。現在は地域の経済が外部から封鎖されている自己完結のものではなく、外部資源に依存するほうが多いとみたほうがいい。農業中心の地域であれば、その土地の気候や肥よく度、働く人びとの気質やスキルなどはその地域の特有の資源であるが、農業機械や肥料などは外部地域のメーカーから調達しているであろうし、また収穫されたものの多くは外部地域の消費地に送りだされていることであろう。
3 外部化をおしすすめるIT化
・このような調達市場および販売市場の外部化は、IT化によって、急速におしすすめられている。インターネットの進展は調達市場と販売市場のグローバル化を可能にしており、外部化を推進している。はたして、それによって地域企業というコンセプトは消失してしまうのはいつのことであろうか。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
- 開催日2018年9月5日
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