サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第46回 <基礎講座>   スモール・ビジネスの地域密着性(1) ―「中小企業経営学入門」(46)―

【誌上テーマ別サロン】第46回
<基礎講座>
スモール・ビジネスの地域密着性(1)
―「中小企業経営学入門」(46)―

1 地域企業という特性
・スモール・ビジネスは特定の地域で活動していることが一般的であり、「地域企業」といってもよいと考えている。もっとも、今日ではIT化が高度に発達し、このスモール・ビジネスが国内外に情報発信ができるようになったので、これまでとちがって、顧客をグローバルに獲得できる状況になっている。
・スモール・ビジネスは市町村といった、ある特定の狭い地域で企業活動を展開しており、しかも活動の中核(コア)となる拠点地域は1か所ないし少数のものに限定されている。当然のことであるが大企業にもこのような活動の重要拠点というべき地域はあるが、拠点となる国内外に散在している。これによると、スモールにおける「少数の拠点」と大企業の「多数の拠点」という比較を行うことができる。

2 大企業とのちがいはどこにあるか
・もっとも、大企業とのちがいは拠点の数が多いか、少ないか、にあるだけではない。スモール・ビジネスではこの特定地域における活動こそがなによりも重視されており、進出・撤退やロケーション(立地)の意思決定が本社の合理的な経営戦略のもとで行われる大企業とは明らかに異なっている。
・スモール・ビジネスの経営者にとって、この特定の地域とは企業活動が行われるメインの場であるだけでなく、日々生活を行っている場であるため、郷土愛、地元愛(civic pride)などといった非合理的な感情や機能もかれらの行動を支配している。そして、ここがスモール・ビジネスと大企業を大きく分けているところである。要するに、拠点に対する考え方が両者の間では明らかに異なっている。

3 定着生活の場で生きるスモール・ビジネス
・大企業の場合、売上高、利益の獲得など、企業への経済的な貢献度に直結することが拠点づくりの考え方であり、働く人びと、とくにコア人材はおおむね拠点を移動する生活を送っている。そのような人間にとって特定の地域は定着して生活する場ではなく、転勤する場のひとつであり、しょせんは移動生活の場にすぎない。
・これに対して、スモール・ビジネスのスタッフ―経営者を含む―にとって地域は企業活動を行いつつ、基本的に定着して生活している場であり、まさに定着生活の場なのである。そして、多くの場合、生まれてから、死ぬまでの人生を「生身」で送る場にもなっている。スモール・ビジネスのもつ地域密着性の根源はまさにここにある。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

Information
  • 開催日2018年8月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用