【誌上テーマ別サロン】第44回
<基礎講座>
「小規模企業」の減少も地域の衰退をもたらしている
―「中小企業経営学入門」(44)―
1 「地域の衰退」をもたらしているもの
・地域の衰退がいわれてから、久しい。中心市街地というべき商店街があき店舗を多くかかえ、シャッター通りになってしまった。そして、大型店も撤退してしまったという。そして、新築の住宅も建設されているが、他方で空家が増え、住宅地のさら地化も進んでいる。また、モータリゼーションが前提の社会になったために、公共施設などの地理的な分散化が目立つようになり、車の動く光景は見えても、人が歩く姿が見えなくなっている。そこで、むしろ公共施設などの集中化をはかり、「コンパクト・シティ」にしようとする動きも生まれている。
・このように、大都市圏を除けば、地域は元気を失い、衰退しているように見える。この衰退の理由は主にどこにあるのだろうか。
2 人口の減少と若者の流出
・地域の衰退で、もっともショッキングな言葉は、少子化と高齢者の多死化にもとづく「人口減少社会」の到来によって消滅する地域がでてくるというものである。人口の減少による地域の消滅が、昨今話題の的になっている。また、次代の地域社会の担い手となる若者が地域の外に流出している。高等教育機関が地域には少ないので、どうしても大都市圏に出ることになる。そして、就職先も少ないために、卒業後、地域に戻ることができないという状態が長期にわたってつづいている。
3 小規模企業の減少にも関心を!
・これとは別に、地域の衰退で気がかりなのは、小規模企業が大幅にダウンしていることである。小規模企業とは製造業では従業員が20名以下、その他の業種では5名以下の企業とされているが、いわゆる中小企業のなかでほぼ90%を占めているといわれる。典型的なスモール・ビジネスである。
・この小規模企業が、21世紀に入って、わが国では大きく減少している。前述の人口の減少の影響はきわめて重要であるが、小規模企業が廃業したり、倒産していることも地域の衰退に大きくかかわっている。競争力のないとか、変化への適応能力がない小さな企業とはいえ、雇用している人びともいるし、また取引業者や消費者も出入りしている。そのような企業がなくなっていくことは、地域にとってダメージになることは明らかである。政府も小規模企業の振興を打ちだし、その事業の持続的な発展を重視した理由のひとつも、このような事情にあろう。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
- 開催日2018年6月5日
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