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【誌上テーマ別サロン】第38回 <基礎講座>  「いきあたりばったり」か「臨機応変」か ―「中小企業経営学入門」(38)―

【誌上テーマ別サロン】第38回
<基礎講座>
「いきあたりばったり」か「臨機応変」か
―「中小企業経営学入門」(38)―

1 「企業はあまり大きくならない」仮説
・「顧客の獲得→コストを上廻る売上高の確保→利益が出る売上高の継続」を通じて、企業は成長のための安定軌道の経営に進むことになり、短期の経営計画を立てることもできると述べた。計画作成(プランニング)は経営のスタートであり、計画のない経営はないといわれてきた。しかし、経営計画をつくれるようになるのは、コストを上廻り、そして利益が生みだされることがつづくことである。顧客が減って売上高がコストを下廻るようになると、損失が生じ、企業は存続の危機をむかえてしまうから、経営者は経営計画をつくり、その実現にむけて活動するよりも損失を減少させ、採算をとることのほうに注力せざるをえなくなる。冒頭に述べた矢印が逆方向に向うことになると経営の継続は困難になる。もっとも、現実の企業の矢印は行きつ戻りつ、前向きになったり、後向きになったりして、「左右に揺れ動く」ものであり、このような動きをしているかぎり、企業はあまり大きくならない。成長のためには、安定軌道の経営のステージに進まなければならない。

2 「いきあたりばったり」と「臨機応変」
・国語の辞書をみると、いきあたりばったりとは、“無計画”のことであり、計画をたてず、そのときどきの様子やなりゆきにまかせることであるとしている。これに対して、臨機応変はそのときどきの場面に臨んで、変化に応じて適切に対処することである。前者には経営する人間に思慮がなく、後者には思慮が入ってくるというちがいがあるように思われる。前者は考えもなく、やみくもに、手あたり次第にでたらめに動くというイメージがあるのに対して、後者はしっかりとした考えがあり、それをもとに動いている。「権道(けんどう)」とは目的を達成するための臨機応変の動き方をさしているが、原点は思慮であろう。

3 「左右に揺れ動く」なかでの経営
・スモール・ビジネスにおける上述の行きつ戻りつ、左右に揺れ動くなかで求められる経営はいうまでもなく、いきあたりばったりではなく、臨機応変である。そのときどきの様子やなりゆきにまかせてしまいたくなってしまうが、大変ななかでもよく考えて動くことが肝要である。よしんば失敗したとしても、よく考えて動いたものであれば、必ずやその経験が後にいきてくるものなのである。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲

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  • 開催日2017年11月5日
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