【誌上テーマ別サロン】第34回
<基礎講座>
もめごとにしない後継者問題
―「中小企業経営学入門」(34)―
1 「もめごと」の発生と回避
・後継者問題に関して、社内でもめごとが起こることがある。だれを後継者にするのか、だれにどのように事業や担当部門を委せるのか、さらに相続や財産分与をどのように行うのか、などの決定をめぐって、コンフリクト(対立とか葛藤)が経営者のファミリー(子ども、親族など)の間で発生し、もめごとになってしまう。
・もめごとはできるだけ回避しなければならない。とくに血のつながりの強いファミリー内部のコンフリクトは、相互に甘えも入った感情的なものとなり他人どおしのものとは違った意味で、きびしく、解決が困難なことが多い。
・いったんもめごとが起こると、解決に時間を要してしまい、「血の結束」という力強さの発揮ではなく、もめごとの当事者がやりあうことでそれぞれ「大量出血」の状態となり、その後のビジネスの継続と発展は大きなダメージをうけることになる。
2 現職経営者の心構え
・現職の経営者としては当然のこととして慎重に熟慮し、次期の経営者や役割分担を決定することがもとめられる。その際、ビジネスとしての存続と適材の人間の選出を前提にして熟慮しなければならない。現在のように企業環境が激動するような状況のもとでは、難しい判断がもとめられており、現状のなかでそれに適任と思われる人間を選ばなければならない。そして、選出の理由を明確にし、ファミリーと候補者たちに説明し、納得を得ることが必要となる。関係者すべての「完全な納得」や「完全な満足」を得ることはないが、しかしそのための努力を行うことがもとめられる。それがバトン・タッチを円滑にするとともに、もめごとを小さなものにしていくことであろう。
3 候補者たちのあり方
・候補者たちは慎重に熟慮された社長などの役割分担についての決定をできるだけ尊重することがもとめられる。もっとも「完全な決定」もやはりなく、したがって「完全な納得」や「完全な満足」もありえない。そこで、どのような内容であれば納得できるのか、そして満足できるのかが問題になるであろう。どうしても不満であるならば退社し、他にチャンスをもとめるべきである。そして、納得し、社内に残るのであれば、「血の結束」ができるようにし、企業の生存のために貢献すべきである。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斉藤毅憲
- 開催日2017年7月5日
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