【誌上テーマ別サロン】第29回
<基礎講座>
地域とともに生きるスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(29)―
1 地域での高い知名度
・スモール・ビジネスは、確かに全国的にみるとほとんど知られていない存在である。しかし、立地し、活動している地域でみると、よく知られている。小規模であるが、その企業の製品やサービスが地域の人びとに受けいれているならば、よく知られた存在であり、知名度は高いのである。当然のことながら信用度もあるわけである。これはまさに地域密着性のなせることである。
・逆にいうと、地域における知名度が低いことは、地域密着性に欠けていることであり、地域に貢献していないことを意味している。それは、企業としての存続を困難にしていくことになる。したがって、スモール・ビジネスの経営者は地域の人びとに受けいれられるための努力をたえずつづける必要がある。
2 「ともに生きる」精神をもつ!
・この地域の人びとに受けいれられるための努力とは、要するに地域の人びととともに生きるという精神をもち、実践することにつながっている。このともに生きる、つまり“共生”がスモール・ビジネスの重要な特徴なのである。
・ところで、ともに生きることは、製品やサービスの提供にかかわる側面だけでなく、製品やサービスの開発や製造の過程にも関与している。製品やサービスを消費するだけでなく、それをつくるところにも地域の人びとはかかわっていることである。さらにいえば、自分たちの住んでいる地域をどのようなものにつくりあげていくかについても、スモール・ビジネスは地域の人びとと一緒に考えていくことが求められているのである。
3 他地域への進出も同じ心で!
・スモール・ビジネスも持続的な発展のために、他(よそ)の地域に進出することが必要になることもあるであろう。ビジネス・チャンスが他の地域にあるとすれば、進出を決定することは当然である。しかし、進出の際には、同じように「ともに生きる」の心をもって臨まなければならない。これまでは縁がなかったが、いったん進出を決めた以上は、その地域にも愛着心をもって企業活動を行うことになる。要するに、他の地域におけるビジネスの成功は、ビジネス・チャンスの発見・評価だけでなく、このような心をもつことによって左右されているのである。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
- 開催日2017年2月5日
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