【誌上テーマ別サロン】第23回
<基礎講座>
「とんとん」がベースのスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(23)
1 顧客獲得のレベル
・起業して、立ちあがるためには、顧客の獲得が必要である。逆にいうと、確実にユーザーになる対象が存在しているならば、起業を行うことができる。しかし、顧客の数が思ったほど多くなければ、その売上高は費やしたコスト(費用)を上まわることができない。
・顧客がいなければ企業活動のスタートを切ることは可能ではない。だが、顧客の数が思ったほどではなく、しかもその期間が長くつづくようであれば、企業活動をつづけることはどうしても無理になる。資金的な余裕が少なければ、そのような顧客が不足している状態を長く継続することはできない。そして、スモール・ビジネスには資金的な余裕はないのが一般的である。
2 「とんとん」、つまり採算をとることの重要性
・したがって、コストを上廻る売上高が得られる顧客を獲得することがもとめられる。必要となったコストと売上高の金額が一致するところが採算がとれることの意味であり、この採算のとれるところ(採算点)は損益分岐点といわれる。英語では“break even point”というが、わが国では「とんとん」といわれてきた。
・コストを多額に上廻る売上高(コスト﹤売上高)が得られれば、利益(プロフィット)が生じ、これに対して顧客が少ないとか、少なくなることで売上高がコストを下廻る(コスト﹥売上高)と、損失(ロス)が生じることになる。
3 利益獲得の継続性が企業存続の前提条件
・要するに、採算がとれる「とんとん」では、それがやっととれる“すれすれ”であってはならない。それでは利益は生まれないのである。企業が生きつづけることを可能にするためには、顧客の安定的な確保を通じて、もう少し利益を生みだすとともに、それを長期にわたってつづけていかなければならない。この利益獲得の継続性によって、企業の経営は安定軌道に乗ることができる。そして、短期的であるが、経営計画を作成し、計画的な経営を行うことができるようになる。
・だが、固定客とか、リピーターといわれる顧客を安定的に確保できずに、不安定な状態がつづくとすれば、売上高や利益の増減にバラツキがみられ、安定軌道に乗ることがむずかしくなる。しかし、スモール・ビジネスの経営には、このような側面があることを認めなければならない。そして、その克服に真剣に立ち向う必要がある。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・放送大学客員教授
斎藤毅憲
[2016.8.5]
- 開催日2016年8月5日
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