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【誌上テーマ別サロン】第21回<基礎講座> 「スモール・ビジネスは成長して大企業になるのか」仮説 ―「中小企業経営学入門」(21)

【誌上テーマ別サロン】第21回
<基礎講座>
「スモール・ビジネスは成長して大企業になるのか」仮説
―「中小企業経営学入門」(21)

1 スモール・ビジネスの成長論
・スモール・ビジネスの成長をどのように考えるべきであろうか。経営学は、小さな企業は成長して大企業になるという仮説を暗黙のうちに前提にしてきたかもしれない。この仮説の命題は、はたして正しいのか。そしてスモール・ビジネスの経営者はどのくらい成長への欲求をもっているのであろか。
・企業の経営者は自分の企業を大きくしようとする欲求を強くもっていると考えられる。大きくすることで成長を遂げることが目的である経営者も多い。自社の製品やサービスが消費者にうけいれられ、それが拡がっていくことは社会貢献のひとつの証明でもあり、成長志向を少しも否定することはできない。
・とくに大企業においては同業他社との競争もあって、製品やサービスの開発に力を入れ、現状よりも少しでも向上しなければならないので、どうしても成長への志向性が前面に出てこざるをえないのである。要するに、現状維持は敗北ではないが、後退とみられることになる。前向きに進むことになると、いまよりもよくなろうという気持ちが強くなる。
・おそらく、スモール・ビジネスの経営者も同じ思いをもっている人間が多いであろう。しかし、他方で必ずしも成長志向をもっていない経営者も確実にいるのである。

2 “大きくならなくってもいい”という経営者
・健全な経営を実現しているスモール・ビジネスの若い経営者から“大きくならなくってもいい”という話をうかがったことがある。成長志向はあまりなく、無理をせず、身の丈で、地域密着で堅実に企業活動を行っていきたいという。そして、このように考えている経営者は、比較的多くいるのかと思った。

3 仮説の例外性
・ところで、「スモール・ビジネスは成長して大企業になるのか」という仮説ははたして正しいのか。確かに、この仮説を実践した大企業が存在している。その点では実証されてきたといえる。しかしながら、企業総数に占める割合からみると、そのような企業は少数であり、企業全体のなかでは「例外的な存在」(斎藤著『スモール・ビジネスの経営を考える』)であるといってよいであろう。その点からみると、反証されていることになる。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・放送大学客員教授
斎藤毅憲
[2016.6.5]

Information
  • 開催日2016年6月5日
  • 場所
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