【誌上テーマ別サロン】第19回
<基礎講座>
スモール・ビジネス経営者のリーダーシップ
―「中小企業経営学入門」(19)
1 「パワーフルな存在」としての特徴
・スモール・ビジネスの経営者はパワーフルであり、エネルギーにみなぎっており、肉体的に元気であると述べた。それだけでなく、かれらは知恵者であり、哲学する人間であり、多くは一家言の持ち主でもある。また、プレゼンテーション能力があり、自信にみちた話し口の、いわゆる話し上手の人が多いかもしれない。
2 ワンマン型のリーダーシップ・スタイル
・このようなスモール・ビジネスの経営者は、ワンマン型のリーダーシップをとるといわれてきた。それは、「独裁型」と訳されるように、他人の意見をあまり聞かずに、自分の考えや意思を押し通す人間のスタイルである。そして、むしろ自分の考えや意思を他人に対して一方的に押しつける強さをもっている。したがって、威圧的に感じたり、ウルサイと思ったり、あまり一緒にいたくないという印象を他人に与えていることであろう。
・ワンマン型のリーダーシップは、他人や集団に対してきわめて強い影響力のあるスタイルであり、フォロワー(部下)は基本的にこれに従うことが求められ、専制的とか、高圧的といわれるものである。
3 最適なリーダーシップ・スタイルとはどのようなものか
・大企業中心の経営学においては、リーダーシップ論は多くの成果を生みだしてきた。それによると、専制型のものから、相談型へ、そして参加型や民主型のスタイルが現在では望ましいリーダーシップであるとされている。働く人たちが担当する仕事やポストはちがっているが、人間は対等・平等であり、参加型や民主型のリーダーシップが最適であるように教科書では書かれている。
・このような主張は確かにそのとおりで、正しいといえる。しかし、どのようなスタイルが最適であるかは、働く人びとと職場の状況との関係のなかで決まってくる。大企業でもいつでも参加型や民主型がいいわけではない。そして、スモール・ビジネスにおいても働く人びとが仕事のベテランになっているとか、比較的専門的な知識を必要としているときには、ワンマン型のスタイルは選択せずに、参加型や民主型に切りかえていくことも必要なのである。
・リーダーシップの選択は、要するに具体的な場にあったものにしなければならず、よくいわれてきたように、「ワン・ベスト・ウェイ」(唯一最良の方法)はないのである。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・放送大学客員教授
斎藤毅憲
[2016.4.5]
- 開催日2016年4月5日
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