【誌上テーマ別サロン】第18回
<基礎講座>
パワーフルなスモール・ビジネスの経営者
―「中小企業経営学入門」(18)
1 生きぬく力量をもつ経営者のパワー
・スモール・ビジネスの経営者は、苦境を生きぬく力量をもっている。そこで、この人びとのもっている企業を存続させていくための日々のパワーは想像以上に強いものと思われる。しかしながら、別のいい方をすると、だれでもスモール・ビジネスの経営者になり、きびしい苦境を乗り切ろうとすれば、大きなパワーを発揮するものと考えられる。“火事場のどじから”、“火事の馬鹿じから”ではないが、このような状況におかれると、意外とすべてではないがだれでも力が出るのが人間なのかもしれない。
・この場合の“どじから”、“馬鹿じから”には、みなぎるエネルギー、つまり肉体的な元気さの発散だけでなく、知恵や工夫といった思考上のブレークスル―が含まれている。つまり、パワーとは単なる肉体的な元気さだけではなく、それを越えたものである。
2 高齢のスモール・ビジネス経営者の特徴
・これまで高齢と思われるスモール・ビジネスの経営者をみてきた経験からいうと、かれらは総じてパワーフルである。健康であるので、肉体的な元気さをもっているが、それだけでなく長年の経験にもとづく知恵の体現者であり、熟慮の人びとである。あわせて度胸というか、大胆さというべき気概がみられる。
・大企業のビジネス・パーソンであれば、その多くは定年退職となり、ビジネスの世界から離なれ「セカンド・ライフ」に入ってしまう。しかし、スモール・ビジネスの経営者は大企業の定年退職者に比較すると、同じ年代でもはるかに元気で、パワーフルなのである。
・その理由は、どのようなことであろうか。おそらくは経営を行い、雇用している人間と雇われて働いている人間のちがいが理由になるであろう。経営する人間には、雇われる人間にみられる気軽さを越えた責任感があり、この責任感を果たすためには、当然のことながらパワーフルに動きまわらなくてはならないのである。“自分の事業で社会にもっと貢献したい”、“従業員の家族の幸福を守りたい”などが、この責任感のなかにいうまでもないが含まれている。
3 「知恵者・哲学する人間」としての性格
・このようにみてくると、スモール・ビジネスの経営者は、知恵や工夫を生みだす知恵者であり、あわせて責任感を感じ、実践する哲学する人間にみえてくる。要するに、かれらの行動面に現れるパワーフルさの背後にあるものもあわせて考えていかなくてはならない。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・放送大学客員教授
斎藤毅憲
[2016.3.5]
- 開催日2016年3月5日
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