【誌上テーマ別サロン】第17回
<基礎講座>
スモール・ビジネスの経営資源分析
―「中小企業経営学入門」(17)
1 環境適応能力欠如の背景
・経済変動とくに不況、取引している大企業の戦略変更、人手不足などの環境変化に対して、スモール・ビジネスの適応能力は弱いといわれてきた。確かに、スモール・ビジネスは大企業に比較すると、そのようにいえる。そして、この弱い適応能力は、スモール・ビジネスに対するイメージをつくりあげてきた。具体的には、“中小企業は小さいだけでなく弱い”とか、“経営の自立性がない”などといった言葉は、このイメージの典型となる。
・それでは、この環境適応能力が弱い背景には、どのような要因があるのであろうか。それは、いうまでもないが所有し、利用できる経営資源が大企業にくらべて不足し、少ないということである。ヒト、モノ、カネ、情報などが経営資源の主たるものであるが、これが少ないために、さまざまに発生する変化に対処できないわけである。たとえば、比較的資金的に余裕があっても、なかなか適材のヒューマン・リソース(人的資源)を獲得できないために、せっかくのチャンスを失うとか、おさえることができるピンチを阻止できにくくしてしまうことになる。
2 最大の経営資源としての「経営者」
・経営資源が不足し、環境適応能力がなく、いわゆる環境変化へのマネジメント(経営)能力がないのが、スモール・ビジネスであるが、その不足を補うのが経営者である。経営者はオーナーとして苦境を生きぬく力量を十二分に発揮し、サクシードへの努力と工夫を行うことになる。
・スモール・ビジネスにおいても、ヒト資源である経営者以外の経営資源が重要な役割を果たしている。しかし、経営者こそがきわめて重要な経営資源であることを認識する必要がある。なにか新しいことをしようと考えても、経営資源が足らずにスタートできないことがある。だが、生きぬく力量をもつスモール・ビジネスの経営者は、なんとかしてこれに対処しようとするのである。
3 社長イコール会社の顔
・スモール・ビジネスの社長など経営者は“会社の顔”であり、外部のステイクホルダー(利害関係集団)によく知られ、一目おかれるような存在になることがもとめられる。要は、会社のシンボルになることが必要で、社長イコール会社と思わせるようにすることが必要である。どうしてもスモール・ビジネスは有名ではなく無名であることが多く、それを克服するためにもシンボルが大切になる。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・放送大学客員教授
斎藤毅憲
- 開催日2016年2月5日
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