【誌上テーマ別サロン】第15回
<基礎講座>
短期志向型経営の特徴をもつスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(15)
1 「経営戦略論」中心の現代経営学
・前世紀後半以降の現代経営学は、環境が激動するなかでの企業経営のあり方を問うものであり、企業を環境変化との関連性から究明してきた。そこでは、激動する環境に対処できる企業経営が「経営戦略論」という分野においてとり扱われてきた。この分野では企業の目標が中長期的な視点から考えらている。もっとも、環境の変化が激しいので、年数的にいえばあまり遠い将来の想定は行いにくいのが現実である。
・この経営戦略論はスモール・ビジネスよりもビッグ・ビジネス(大企業)にとって意味がある。大企業は環境の変化に迅速に対処できないところがある。企業としての目標を決定するにしても、大企業の場合、組織内の調整に時間がかかるし、目標決定の結果として経営資源の配分を変えることになれば、組織の改編や人的資源の配置がえも必要となる。要するに、環境変化に対処するためには、スモール・ビジネスとちがって大企業では構造改革(リストラックチァリング)がもとめられるのであり、経営戦略論はまさにこれにこたえなければならない。
2 「日々の経営」に追われているスモール・ビジネス
・経営戦略論がスモール・ビジネスに不要であると考えることはできない。しかし、スモール・ビジネスにとってもっと重要なのは、日々のたゆまぬ活動を通じて、企業として存続しつづけられるだけの成果を得ていくことである。確実に毎日売上高をあげる努力をしなければ存続することが困難になるからである。要するに、スモール・ビジネスは日々の経営に追われている。それは、スモール・ビジネスが中長期的な視点の経営よりも短期志向型の経営にならざるをえないことを意味している。
3 「真剣さ」を特徴とするスモール・ビジネス
・日々の経営に追われているということは、毎日毎日が真剣勝負を行っているということでもある。“大企業病”いう言葉がある。大企業では一部で働いたふりをしていても、だれかがカバーして全体としてなんとか企業経営をつづけられるし、報酬も得られるのである。
・しかし、スモール・ビジネスにとってはそのような余裕はない。一人一人のメンバーが毎日を真剣勝負で臨まなければならない。そうでなければ企業として生きつづけることができない。そして、この「真剣さ」こそは働く人びとを育てるとともに、人間としての強さをつくりあげるのに役立つ。
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・放送大学客員教授
斎藤毅憲
- 開催日2015年12月8日
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