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【誌上テーマ別サロン】第14回  組織図が不要なスモール・ビジネス

【誌上テーマ別サロン】第14回
<基礎講座>
組織図が不要なスモール・ビジネス
―「中小企業経営学入門」(14)

1 組織図は必要か、不要か
・組織全体がどのように構成されているのかを示す「組織図」が必要であるかどうかといえば、必要であるというアンサーが多く返ってくることであろう。とくに規模が大きく、その事業分野が多様に及んでいる企業においては、組織図がどうしても必要となる。
・これに対して、1人企業や小規模企業は働いている人間も少なく、権限や責任の関係も単純なので、組織図を作らなくてもかまわないと考えられ、不要といえるであろう。しかし、取り扱う製品やサービスが多くなり、雇用される従業員が増加してくると、組織図を作成しておく必要がある。
・組織図は、企業内部の人びとにとっては必要である。外部のステイクホールダー(利害関係集団)にとっては、必ずしも必要とはいえないが、自分の企業を外部の人びとにも理解してもらうためには、同じものを用意しておいたほうがいいと考えられる。

2 組織図の事例
・あるスモール・ビジネスの組織図を調査したときに、つぎのような話を社長の子どもから聞いたことがある。父親である社長がトップにいて、その下に横一線に、経営者や管理者としての専務の母親、工場長である他人、課長の長男、係長の二男が並んでいるという。工場長のもとには部下の従業員がいるが、専務、課長、係長には部下はいないという構造になっている。
・この組織は、普通に考えられる社長の下に専務がいて、その下に工場長、さらに課長、係長といった階層制にはなっていない。それぞれのポジションは社内での経験や社長のつながりなどから付与されているが、社長からみると、直属の部下として、同列に扱われていることになる。別のいい方をすると、円の中心に社長がいて、4名は等距離にある円のどこかに位置しているともいえる。

3 構造化されていない組織
・この事例はスモール・ビジネスの組織が大企業のように階層的にしっかり構造がつくられていないことを示している。しかし、それでも基本的に可動しているのである。また、よくいわれているように、スモール・ビジネスの人的資源(ヒューマン・リソース)は“なんでも屋”的であり、担当する仕事の範囲は大企業とちがって広いといわれる。そうであるとするならば、職能分化もあまり行われず、低いレベルのものと思われる。もっとも、規模の拡大や取り扱う製品やサービスの多様化によって、高いレベルに進むのである。

永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授・放送大学客員教授
斎藤毅憲
[2015.11.8]

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  • 開催日2015年11月11日
  • 場所
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