【誌上テーマ別サロン】第132回(最終回) <基礎講座> スモール・ビジネスのおけるSDGs ―「中小企業経営学入門」(132)―
【誌上テーマ別サロン】第132回(最終回)
<基礎講座>
スモール・ビジネスのおけるSDGs
―「中小企業経営学入門」(132)―
1 SDGs重視の現状
・2015年に国連が採択したのが、よく知られているSDGs(持続可能な開発目標)である。2030年までの国際目標で、人類の生活や生命にかかわる17の目標がやさしい言葉で示されている。貧困、男女差別、生活の質向上、環境問題など多方面にわたる分野に及んでいる。
・この目標を実現するのは、当然のことながら地球に住む人間であり、自分ならなにができるかを考えなければならない。しかし、それは個人だけでなく、いかなる組織や団体、そして企業にも求められている。
・神奈川県では「かながわSDGsパートナー」、横浜市では「Y-SDGs事業者」などの認証制度がスタートしており、認証をうける企業がでている。これは、これまであった「CSR(企業の社会的責任)」とも関連しており、その拡張を目ざしているともいえる。
・おそらく、SDGsは2030年までの期限つきの目標ではなく、さらに長くつづくものであることにちがいないが、解決に緊急を要する問題も多く、とりあえず2030年を目途にして努力する必要がある。
2 大洋建設㈱の事例
・大洋建設㈱は横浜市戸塚区に本社があり、すでに半世紀を越える歴史をもつ建設業者である。CSRに熱心な企業で、横浜型地域貢献企業、上述の神奈川県や横浜市のSDGsの認証を受けている。
・重要な行動として、まずCO2の排出削減による環境保全がある。具体的には本社の建物の緑化、使用電力の再生エネルギー化の100%実現を行いつつ、公立学校の屋根貸し太陽光発電事業にも参加している。
・そして、災害発生時にとられる応急措置に関しては、横浜市と協定を結んで、地域における安全・安心の確保といち早い復興のために貢献する姿勢を示している。
・また、子どもの貧困が全国的に問題になっているが、「子ども食堂」を設置している。子ども食堂はいわゆる食品ロスを削減するのにも役立っている。子どもの支援については、少年野球チームの結成にも力を貸し、青少年の育成活動を展開している。
・さらに、スポーツでは、「プロ野球独立リーグ選手のセカンドキャリア支援」を行い、選手が野球をやめた後の新たな活動の場の提供に関わっている。
3 新しい経営づくりとベースとしてのSDGs
・大洋建設㈱は、SDGsの考えをもとにして、新しい経営づくりを行いはじめていると評価できる。とくに同社がSDGsのなかでとくに重視している項目は、7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」、11の「住み続けられるまちづくりを」、12の「つくる責任 使う責任」、13の「気候変動に具体的な対策を」、17の「パートナーシップで目標を達成しよう」の6つであるという。今後もどのようなかたちでSDGsによる経営の改革・改善を行っていくかを注意深く見ていきたい。
(2021.6.16稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授 斎藤毅憲
誌上テーマ別サロン<基礎講座>「中小企業経営学入門」は今回で連載は最終回となります。
次回からは、新たな講座が始まります。ご期待ください。
Information
- 開催日2024年3月5日
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