サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第130回 <基礎講座>   商店街の変質―「クリニック・ドラッグ通り」への転換 ―「中小企業経営学入門」(130)―
【誌上テーマ別サロン】第130回
<基礎講座>
  商店街の変質―「クリニック・ドラッグ通り」への転換
―「中小企業経営学入門」(130)―
1 衰退との併存;「変質」の動き
・商店街の衰退がいわれて久しい。すべての商店街が元気を失っているわけではないが、その多くが衰退しているだけでなく、姿を消そうともしている。そして、流通システムの多様化やそれに対応する消費者の買物行動の変化がこの衰退にかかわってきた。
・しかし、それと並んで「変質」の動きも見られる。それは物販の小売業ではなく、サービス業の店舗の増加である。情報サービス、教育産業(学習塾)、医療サービス(クリニック、接骨院)などの進出が目立っている。かつては娯楽サービス(パチンコ屋やカラオケ屋など)がコアであったが、現在では地域住民の特性をふまえた多様なサービス業が見られるようになっている。つまり、これは「経済のサービス化」といわれる産業構造の変化を意味している。
2 医療サービスの増加によるクリニック・ドラッグ通りの形成
・長寿化、アンチエイジング、健康志向の高まりのなかで、医療サービスへのニーズが高まり、クリニックや接骨院・整体院などが住宅街だけではなく、商店街にも集積されるようになった。そして、総合病院とともに地域医療を担っている。
・そして、商店街によっては、医療サービス業の比重が高まり、クリニック・ドラッグ通りになっているような事例も見られる。クリニックができると、医薬分業になっているので、薬局、薬店、ドラッグ・ストアが周辺に開業される。これにより、白衣やカラフルなユニフォームの人びとが多くなる。かくして、クリニック・ドラッグ通りの商店街は商品を購入する場でなく、医療サービスをうける場になっている。
・私の住んでいる地域も、このようなクリニック・ドラッグ通りになっており、とくに内科と歯科が目立って多くなっている。患者が多いので、経営的に苦しいクリニックは少ないであろうが、コンビニが隣接して営業しているような状況が現実に発生している。コンビニどうしはあまり近くにあると、競争がきびしくなり、客のうばいあいが生じるといわれる。おそらく患者が多い状況がつづいているので、その心配はないが、適正な配置という考え方が大切になるであろう。
3 クリニック・ドラッグ通りの課題
・医療サービス業の比重が高まるようになると、院長などは自分のクリニックの経営だけでなく、商店街のあり方も検討し、商店街のリーダーとしても活躍することが求められる。また、同じ科目のクリニックよりもいろいろな科目のクリニックを誘致して、全体として「総合病院」になるような商店街づくりに貢献することが大切になる。さらに、クリニックと物品の小売業やその他の業種とのネットワークづくりについても模索し、実行していくことが期待されている。
(2021.6.5稿)
             永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
Information
  • 開催日2024年1月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用