サロン情報詳細


【誌上テーマ別サロン】第124回 <基礎講座>   ソバ・カフェ――”ソバ屋は変わる” ―「中小企業経営学入門」(124)―
【誌上テーマ別サロン】第124回
<基礎講座>
  ソバ・カフェ――”ソバ屋は変わる”
―「中小企業経営学入門」(124)―
1 小規模な地域でのイノベーション事例
・神奈川県内の人口減少地域のソバ屋に、たまたま入店した。漁業を中心としつつも観光業がメインの町といってよい地域である。外からみると、明らかに昔ながらのソバ屋の雰囲気はない。入店して、内のしつらいはソバ屋よりもカフェの感じが強い。インテリアもカフェ風である。
・ソバ屋といえば、ウナギ屋などと同じように、木造建設で、どうしても木を素材とした茶色をベースにしたエクテリアやインテリアを想像してしまうが、そのようなイメージはまったくない。むしろカフェであり、明るく、若者むけの感じである。
・メニューをよく見ると、「ソバ・カフェ」とある。ソバのメニューはあるが、カフェともあり、ソバ屋兼カフェ、またはカフェとソバ屋のミックスなのである。要するに、ソバ屋ではあるが、同時にカフェになっている複合機能をこの店舗は有している。
2 ソバ屋は変わった!
・これまでのソバ屋は現在では中高年齢者をメインの顧客にしている。若い消費者が入店している比率はどう見ても高くない。しかし、この店舗を見ていると、若い世代も入店している。むしろ、中高年齢者からすると、ソバ屋のかつての雰囲気がないので、入りにくいのかもしれない。
・ソバのメニューも目新しいものがあり、どんぶりもずいぶんに変わっている。ラーメンもこれまで一般に使われてきたものとはまったくちがっている。明らかに、このソバ屋は新しいものにイノベーションしている。
・この新しさが、若い世代の顧客にはアピールしているのかもしれない。店をとりしきっているのも、中高年齢者ではなく、若い世代の人びとである。もっとも、かれらは実家のソバ屋を継承した後継者ではないように見えた。おそらく、外食系サービス業を雇用され、たまたまソバ・カフェを運営しているのであろう。ソバ屋の後継者でも、このようなイノベーションはできるが、先代の経営者が存命であるならば、抵抗にあってなかなかやりづらいことであろう。
3 見通す力と大胆さが必要!
・これまでのビジネス・モデル(経営のやり方)で経営がうまくいかなければ、ビジネス・モデルの変更も必要である。伝統的なソバ屋のスタイルで経営がつづけられないとすれば、大きなダメージをうける前に、廃業してしまうという意思決定もできる。しかし、なんとか生存していこうと思えば、ソバ・カフェのようなイノベーションも考え、実行することが必要となる。
・とくに中高年齢者がメインの顧客にしているところでは、若い世代へのアピールが大切である。なにをすればよいかを見通す力とともに、思ったら大胆に実行する勇気が求められている。そうでなければ、生存はむずかしい。
(2019.11.30稿)
永続的成長企業ネットワーク 理事
横浜市立大学名誉教授  斎藤毅憲
Information
  • 開催日2023年7月5日
  • 場所
  • 時間
  • 費用